突然現れたその人は、桜華くんに対して脅すように話しかけていた。
そんなの、反抗出来る訳がないッ
だって、桜華くんは恐怖で縛られているから...
すると、その人は桜華くんを殴ろうと拳を握りしめていた
私が足を動かすまで、時間はかからなかった
ドンッと鈍い音がしたと思うと、
左頬がジンジンと熱かった
私は痛みを忘れて、目の前にいるそいつに向かって声を張り上げてそう言った
熱を伴って発せられたその言葉に、私はたくさんの想いを乗せた
その言葉を全て出し切ると、私は妙に達成感を感じた
桜華くんもまた、私のように全てをぶつけた
すると、そいつはニヤリと笑った
その笑みは憎ったらしくて、私は嫌い
私は、そいつが何かをするのかもしれないと思い、桜華くんを抱えて空に飛んだ
私は記憶の中からあいつの顔を探した。
5年前..9年前..それか、もっと前..
だけど、あいつの顔は知らない。
だから
本当に知らなかった
いくら記憶から取り出そうとしても、まるで栓を閉められているように固く閉ざされる
それに、ブラッドと言うと、Blood..."血"が想像できた。
意味もなく血などという名前にするのかと私は疑問に思った
私はとても嬉しかった。
私は桜華くんのヒーローか...なら、絶対に助けなきゃ
桜華くんがその先を言う前に、私は口を開いた
何度でも
何度でも同じことを言ってやる
桜華くんは決めたの。組織を抜けるって
その意志を私は尊重したい
だから、桜華くんが抜けるって決めたことを、私は成し遂げるって決めたの
桜華くんはクルッと方向を変えて、森の中に走って行った
信じてくれてありがとう
気持ちは伝えられないものじゃない。人には必ず心があるから、きっと伝わる。
目に見えないけれど、必ず受け取ることが出来る
だから、私を信じてくれた桜華くんの気持ちが、私を勇気づけてくれたんだよ
感情をあまり荒らげるな..冷静に、相手の動きを見なきゃ..
それだけじゃなく、心の動きもしっかりと..
確か、その言葉は桜華くんも以前言っていた
聞きたくない。
その口を早く閉じて
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
next☆
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。