ヒーローに応援を要請した後、私は市民の安全を確保するため、避難を指示した
未だ敵は個性的発動中で、攻撃を放っては来ない
敵の前に立ち、いつ攻撃が来ても受け止められるよう待機しているのは勝己くん
私は少しでも速く市民の安全を確保し、勝己くんの援護に向かいたいと思っている
敵の襲撃が招いたのは被害だけでなく、混乱
情報を入手できない者達にとって、今この時間はとてつもなく大きかった
ヒーローはみんなを安心させなければいけない
不安要素を作っちゃダメなんだ
私が焦ってる場合じゃない
焦りは自身の混乱だけでなく、周りにも影響を及ぼす可能性がある
だから、冷静にならなきゃ...
人は何かを守るために嘘をつ吐く。
でも、守るために正直になることだって無い訳じゃない。
混乱を抑えるために嘘を吐くこともある。逆に正しい情報は、時には凶と出ることがあるから。
でも、私は正しき情報を..現況を、事実をそのまま伝えた
これが吉と出るか凶と出るか..それは分からない
精一杯の気持ちを言葉に乗せた
それが皆さんの元にどう届いてくれるかなんて分からない
でも、言わなきゃどうにもならない
私はこの時初めて、ヒーローの視界というものを見た気がした
信頼の眼差しが自分に向いていた
それが、何よりも嬉しかった
しかし、それに自惚れている暇などない
私には私のやることがある
慢心も自尊心も捨てろ
ただひたすらに守れ!
空中に込められた謎の力は既に一軒家をまるごと覆ってしまうほどにまで大きくなっていた
ここまで大きくするのに、所要時間は2分程度
時間と大きさから換算しても、威力は侮れない
敵は溜め込んだ攻撃を私たちの方に向けて
一気に放った
進むと共に地面を抉る様子は、
その威力を物語っていた
一方の勝己くんはそれを受け止めるため、個性を発動させていた
パチパチと発火すると、威力の高い爆発が敵の攻撃へと向かって放たれた
連続的に個性を使用し続けているため、勝己くんの周りは爆風が荒れ、煙もたっていた
そして、勝己くんが私を呼んだ理由は1つ
1人じゃ受け止めきれないと判断したから
と言っても、攻撃自体は受け止められていた
勝己くんが受け止めきれないと判断していたのは、周りにはびこる自身の爆風と、敵の攻撃から漏れた小さな攻撃
それらが混ざり合い、威力を高めあっていた
それがどうなるか
そう、周りへ影響を与えてしまうのだ
周囲の建物を巻き込んでしまう
それでは、市民にまで被害が及んでしまう
だから私は..これを食い止める
私は周囲の風を操り、周りへの被害をゼロにした。
揺れていた旗も、看板も、全ての動きが止まった。
次にすることは、攻撃への加勢
私は操った風を勝己くんの爆発に乗せた
私の動きに気付いた敵はすぐざま攻撃を下げ、大きく1歩退いた
その瞬間、敵は私たちの脇を通り抜け、後方へと猛スピードで走った
スピード勝負なら、負ける訳にはいかないから
私はすぐに体を敵の方に向け、個性を使用して走り出した
敵には予想よりも簡単に追いついた
シンプルな思考だった
戦闘が許可されていないなら、ひたすら防御に徹すればいい
防御も戦闘の一部だけれど、敵を無視しちゃえばいい
存在的に無視はできないけれど、攻撃を一切与えず、敵にも触れない
なら、戦闘って見なされないんじゃないかな
(ほんと、シンプルな思考..)
浅はかだと言われるかもしれないね
それでも、身体は動いちゃうから仕方ないよ
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編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。