幸せな時間なんて、長続きしない。
それは、私もよく知ってること。
幸せだって思えるのは、本当に一瞬だ
でも、一瞬だからこそ、私はその瞬間がとても好き
好きなものは、大切に保管したい。それは、誰でもそう思うことがあると思うの
形に残したり、手元に残したり、その好きな空間にずっといたいと思うことがあるはず
でもさ、
大切なものに形が無くったって、手に届かなくたってさ、私はいいの
私は、そう思うの
何か素敵なことをまた言ってくれるのかな、と密かに期待し、私は勝己くんのことを見つめた
私たちは色んな演習を積んで、色んな経験をした
ヒーローになるにはとても大事な事ばかりだけど、まだまだ足りない
それでも、足りない中で補い合っていくことで、全員で協力することで、私たちはきっとヒーローへの1歩を掴める気がする
それには、誰一人として欠けちゃいけない
掴むなら、全員でだ
そう言い、私はベットから足を下ろした
その瞬間、勝己くんは私を止めはしなかったものの、とても驚いた顔をしていた
その表情はきっと、私への心配なんだろうな、と思った
自惚れだって言われてもいいよ。私が勝手にそうだと思ってるだけだから
意外とふらつく身体をどうにか真っ直ぐに保ち、私は部屋を出た
呑気にそんなことを考えている間、爆豪は....
混乱していた
すると、勝己くんは私に冷たい目を向けながらも、財布からお金を出して、私の分まで払ってくれた
畑の周りで傘を掲げては木を大きく成長させてそうなアニメに出てくる坊主の子のように、パンを無造作に差し出してくる勝己くん
ほんとにありがと
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編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!