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長い演習が終わり、ようやっと煙草が吸える…と思い、喫煙所への足を速めた。
きっと、鬱先生あたりが居るだろうなんて考えるが、その場に居た人を見て思わず顔を顰めた。
最悪だ…と言うようにわざとらしくため息をつき、彼とは対角の場所に腰を下ろす。
煙草を取り出し、ライターで火をつけようとすると
と、止められた。
当然、全力で嫌そうな顔をして睨んでやる。
彼はそう言うと、自分の煙草に火を点けながら此方に近づいて来る。
反射で後退ろうとするが、腕を引っ張られて適わなかった。
振り払おうとするが、彼は思った以上に力が強いようで呆気なく傍に引き寄せられた。
表情は変えずに彼の方を向けば想像以上に顔が近くて、目が合ってしまった。
と思えば、彼はお互いの煙草の先端をくっつけて、此方が咥えている煙草に火が移れば離れていった。
彼は満足したように笑を浮かべれば、煙を吐き出した。
正味、顔が赤くなってるのは自分でも分かった。
一瞬だけ、胸が鳴った気がした。
煙草を吸う振りをして顔を隠した。
仕方なく、と言うように煙を吐き出すが、顔の熱は収まらなくて、兎に角顔を見られないようにするのが精一杯だ。
しかし、再び無言で腕を引っ張られて、自然と顔を向けてしまった。
と、同時に唇が重なる。
情けない声と共に顔の熱が増したのが分かった。
笑い混じりにそう言われるが、不思議と苛立ちは無かった。
唐突に告白され、彼は優しい笑みを向けてくる。
そんな顔をされては、
と、今まで隠してきた言葉を返さざるを得ない。
顔の熱はおさまらない侭、もう一度だけ唇を重ねた。
……………………………
それから、以前より喫煙所に行く回数が増えた。
大体先輩と一緒なので、よくシガーキスをするようになった。
大先生の前でやったらめっちゃ吃驚してて、2人して顔に爆笑してたのが新しい記憶。
なんて言うが内心嬉しくて、今日もまた喫煙所への足を速めた。
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編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。