続きはまだありません
w/r/w/r/d【BL短編集?】
この作品をお気に入りにしよう!
「お気に入り」した作品は「本棚」に追加され、作品更新時にPUSH通知を受け取ることができます。
────────────────────
『藍色の彼はやけに楽しそうですが。』
我々軍は先週からから夏休みの様で、皆昼時まで起きてこない。
そんな中、グルッペン、トントン、オスマン、鬱先生は談話室にて紅茶やコーヒー、甘いお菓子等を嗜みながら世間話をしている。因みに、ひとらんらんも起きているが彼は農作業があるからと会話には参加しなかった。それを手伝わせるためにグルッペンはあの狂犬組と呼ばれているコネシマとシャオロンを無理やり起こし派遣したが、ひとらんらんの顔は正味嫌そうであった。
「大先生、灰が落ちる。」
「…え、あぁ、ごめんよ。」
指摘したのはトントンだった。何やら最近、煙草を咥えながらボーッとしている事が多いらしく、「昨日も灰でカーペット焦がしたやろ。」と続けて言われていた。当の本人は「ごめんて。」と軽く謝っていたが、トントンの顔は変わらず顰めている。そんな様子を気にしたオスマンは、ティーカップに入っている紅茶を一口飲み鬱にこう言った。
「何か、悩み事でもあるん?」
「いやぁ、なんというか、夏休み入ってから暇で暇で。ついボケーッとしちゃうんだよね。」
「確かに、最近はシャオロンも大先生を追いかける事は(以前に比べれば)少なくなったな。」
と、マカロンを頬張っているグルッペン。
「夏休み直前まで戦争してたし、きっと皆休みたいんやろ。」
「そうか?コネシャオゾムは戦争終わってからも演習場でよく内ゲバしとるけど。」
と、日々徹夜で飲みなれたコーヒーを片手に持っているトントン。
「内ゲバとか、ここ2、3年参加してねぇかもなぁ。皆の的にされてるだけで。」
「反撃せぇへんの?」
「近接は苦手でね、あの子犬達の方が俊敏に動くから攻撃なんて当たらんわ。」
「せやな。」
「そもそもスーツで近距離ってどんな動きすればええねん。」
「ほんまな。」
「じゃあ、遠距離から反撃すれば?」
そう口にしたグルッペンに、鬱は不思議そうな顔を向ける。
────────────────────
『復讐鬼→←←←JK』
某月某日。
オスマンは、ずっと思いを寄せていたひとらんらん(以後ひとらん)に思い切って告白をした。このまま何も言わずに後悔するくらいなら、さっさと振ってくれた方が諦めがつく。そう思い、告白した。
熱い台詞だった。
しかし、オスマンは羞恥感より過酷さを感じていた。何故なら、絶対に断られると思っていたから。
反射的に閉じた目を、開けるのが怖かった。彼の顔を、今だけは見たくなかった。沈黙が棘となって胸に刺さる。彼は、自分は、今どんな顔をしているのだろう。やけに長く感じられた沈黙を裂いたのは、告白を受けた彼だった。
「オスマン…。俺、オスマンの事嫌いじゃないよ。だけど、恋愛感情で好きかって言われたら、正直分からない……。」
オスマンを傷つけないように言葉を選んでくれているのだろう。時々詰まったり、えっと…と悩むような素振りを見せる。そんな様子を、オスマンは申し訳なく思っていた。
「…けど、嬉しいよ。オスマンに好きって言って貰えて。」
彼は、マスク越しでも分かるくらい何一つ曇りない微笑みを浮かべた。悲しいくらい優しい笑みを。オスマンも、自分の気持ちを押し潰すように笑みを浮かべた。
「そっか。そうだよね。ごめん、急に。」
耐えられないという様に、その場から早足で自室に戻る。目頭が熱くなった。自分では分かっていたはずだろ。これで諦めるって決めたやろ。涙が零れないように必死で自分に言い聞かせる。この場で鼻をすすってみろ。ひとらんならすぐ勘づいて引き止めてくるだろうに。しかし、目からは大粒の涙が零れている。腹から込み上げてくる声を必死に抑え、やっとの思いで自室の前に着いた。部屋に入り、嗅ぎなれた紅茶の匂いに縋り付く様に泣いた。沢山泣いた。声はなるべく出さないように。自分のハンカチで目を必死に抑えて。力なく椅子に座り込んで。
…それから、どれくらい時間が経ったのだろうか。時計を見る余裕もない。とりあえず、泣き疲れたのでふらふらとベットに歩いて行き、雑に寝転んだところで意識が途絶えた。
一方その頃…
時刻は19:10頃。我々軍基地食堂にて、司令室から離れられないロボロと、医務室にて病怪我人の兵士の世話で忙しいしんぺい神、彼の都合で2ヶ月に1回程度しか帰って来れない兄さん、いつもこの時間には来ているはずのオスマンを除き、全員が集まっていた。もちろん、ひとらんも。皆がオスマンの席を見つめて、心配そうに首を傾げていた。ひとらんは、来ない理由は何となく分かっていた。自分が曖昧な返事をしたから気にしているのだろうと思い詰めていた。耐えかねたひとらんは沈黙の中、席を立って「様子見てくる。」と言い、食堂を出た。途中、トントンも着いてくると言ったが、何とか一人で行かせてくれと押し切った。その後をトントンが追うことはなかった。
ひとらんは控えめにノックし、控えめな声で「オスマン…?皆もう集まってるよ。」と問いかける。しかし、中から返事はない。ひとらんがドアノブに手を掛けると、無防備にも簡単に扉が開いた。ゆっくりと扉を押し室内を見渡せば、ベットにオスマンがうつ伏せになっているのが目に入った。
「…!?オスマンっ!」
何処か怪我をしているのか、熱でもあるのか、そう思い、焦った様にオスマンに駆け寄るひとらん。顔色を確認しようと肩を軽く押し、仰向けにひっくり返す。そうすると、少し辛そうに顔を顰めているオスマンの寝顔があった。目の際には泣いた跡がくっきりとあり、長い睫毛は微かに濡れていた。ひとらんは、泣き疲れて寝てしまった事を察して、心の中でごめん…と謝った。本当は、オスマンに告白されてすっごく嬉しかった。だけど、まだ実感無くて、素直に気持ちを伝えられなかったんだ。でも、今なら言える。
「好き……。」
そう言って、オスマンの唇に触れるだけのキスをする。柔らかい感触が、微かに理性を刺激する。ひとらんは止まらなくなり、先程より長いキスをする。これ以上はやばいな…と思い、離れようとすると、いきなり後頭部を押さえ付けられ、今度はオスマンからキスを仕掛ける。ひとらんが驚いて目を見開くと、薄らと覗いている翡翠色の瞳と目が合った。嬉しそうに笑っている。
「おすま…っんん…!」
急な事で口を開くが、それをいいことに容赦なく舌が入ってくる。そのまま口内を犯され、舌を動かされる度に卑猥な音を立てている。頭がふわふわしてきて、力も入らなくなり、ひとらんはもうオスマンにされるがまま、いつの間にかベットに押し倒されていた。酸欠で苦しくなり、オスマンの肩を力無く押すひとらん。察したオスマンは、唇をゆっくりと離していく。互いの舌先を銀の細い糸が繋げている。
「…っひとらん……」
「おす…まん……ごめん…」
「……え?」
「ごめん…ごめんなさい…まだ受け入れられなくて、俺が曖昧な返事しちゃったから泣いてたんだよね……?」
気持ちが高ぶって、目に涙を浮かべるひとらん。遂にそれは目からこぼれ落ちる。オスマンはそれを優しく拭い、黙って話を聞いている。
「ぐす…っごめん、好き…オスマンが大好き…っ」
「…!ひとらん…っ!」
ひとらんのその言葉を聞くと、オスマンは安堵した勢いでひとらんに抱きつく。互いに互いの体温を感じながら、2人は目を合わせて幸せそうに笑いあった。
「…大好きだよ、ひとらん。」
オスマンはそう言い、もう一度だけ軽いキスを落とす。
ひとらんはふと我に返り、時計を確認すると19:30を過ぎていた。これ以上はマズいと思い、オスマンに「そろそろ戻らないと……」と告げる。オスマンも時計を見ると、「え、もうそんな時間やったんか」と急いでベットから降りる。エスコートするようにひとらんに手を差し出さし、「手、繋いでええ?」と照れくさそうに言う。ひとらんは嬉しそうに微笑みながらその手を握り「もちろん。」と答え、オスマンに続いてベットから降りる。手を繋いだまま廊下を歩く。時々目が合っては笑いあっていて、喋らなくても楽しそうにしていた。食堂に着けばアイコンタクトをとり手を離し、扉を開ける。中からは「おかえりー」「何してたんだよ」「おせぇぞ」等と言われたが、2人とも「ごめんごめん」と軽く謝っていた。席が隣同士の彼らは席に着くと「秘密だよ」と言うように人差し指を口元に当てて微笑んでいた。
…皆気付いてるとは知らずに。
────────────────────