『先キス』
☆31☆
な「…神ちゃん?」
神「ん?…なんや うつむいて?…なんか、あったんか?」
休み時間。
思いきって、聞いてみた。
遠回しにとか、苦手だから…
ストレートに。
な「あのね?…私の事…避けてる?」
神「はぁ??なワケ…」
神ちゃんが話し出すと…
と「神ちゃんが、なゆを避けるワケないでしょ?……なゆ?分からないの?」
神「あっ!ちょっ!ちょっ!とも///??」
と「ほらっ?分かりやすい!」
な「…えっと………」
神「や、なゆ?ええねん!そんなん、考えんでもぉ〜!!!」
な「う〜ん??…ごめん、とも……なんにも分からないよ??」
と「ぷっ!ww この鈍感さに、救われるとは…ね?神ちゃん?」
神「ぅへぇ?……んまぁ、とにかく!次 行くぞ!!!」
と「は〜〜い!w」
な「ねぇ〜ズルイよぉ!何の話しぃ??」
☆32☆
神ちゃんは「言えへんねんっ!!!」って、先に行ってしまった。
その後を「なゆ、置いてくぞぉ〜」と、ともが続いた。
な「え!待ってよぉ〜〜!まだ準備出来てない〜〜!」
この瞬間…
楽しかった…
このふたりが、側にいないと…
学校が、つまんないんだ。
この時は まだ、私達の関係は崩れてはいなかった。
けど…
昼休み。
な「3人って…イイねww」
私達は、屋上でお弁当を囲んでいた。
と「そんなの、ずっと前から分かってた。」
神「…そ、そやな……」
ん?神ちゃんまた変?
何、隠してるんだろう…
もしかして…私…ジャマ??
と「それよりさぁ!また出掛けない?3人で!!!」
神「おっ!ええやんっ!ドコ行く?」
そんな話しをしていたら、思いついた。
☆33☆
お礼って…こんな事でもイイのかなぁ……?
な「私……中間先生とデートしたいな…//」
と「えっ?…チョットなゆ?何言ってんの?今は3人でって…」
な「あ、あのね//?…昨日の作業 頑張ったから、中間先生が何かお礼してくれるって//…考えといてって//」
と「…お礼って…」
な「ねぇ?神ちゃん?男の人って、どんな所に行きたいのかなぁ?やっぱり初デートは……夢の国?」
神「っ!!!……ゆ、夢の…」
と「もぉ辞めてぇッ!!!」
ッ!!!ビクッ!!!
と、ともが……大声をあげた…
それだけで私はショックだった。
いつも冷静なのに…
と「もう……神ちゃんに、そんな話しするの辞めてよ?……なゆ…鈍感すぎるよ……」
ともは、今にも泣き出しそうに…
涙を浮かべて…
その場を離れて行ってしまった。
☆34☆
神「なゆが…悪いんやないから…大丈夫や。」
言葉では そう言うけど…
うつむいた その横顔は……辛そうだった。
な「……わ、私……どうすれば…」
神「せやな……」
神「…なゆは…笑っとったら ええよ!…俺は、笑うてるなゆが、一番ええからなっ!」
いつものドヤ顔も、私を気遣ってる分だけ、どこか弱々しい。
な「…神ちゃん……ッ…」
優しい神ちゃんの言葉に、私は泣いてしまった。
神「んもぉ〜泣くなや〜w ホンマなゆは、ともが好きなんやな?」
な「うん…うん…ッ………そうみたいッ…」
神「ふふっw ええなぁ?そんな友情。」
な「……神ちゃんだって…好きだよ?」
神「…//……そっか。……ありがとな…」
神ちゃん…
今の…ありがとうの笑顔じゃないよ…
どこか淋しそうで…セツナい。
私達…どうなっちゃうんだろう……?
☆35☆
次の朝。
な「…え……とも……どうしたの?」
と「な、何でもないよ!」
顔を覗き込む私から、顔を隠そうとする とも。
な「まさか!イジメ?」
と「なワケあるかいっ!!!」
な「じゃ、なんで目が腫れてるの?殴られたんじゃないの?」
と「・・・っぷっあはははは〜!!!」
ともが、いきなり笑い出すから、私は何がなんやら分からず、ポカ〜ン…としてしまった。
と「なゆ〜ww ナイス天然ww」
な「ふぇっ?…て、てんねん?」
と「もぉ〜〜ごめん!めっちゃ反省した!」
な「…反省?」
と「うん。なゆが離れてくかと思ったら…涙ばっか出てきたの。…だから腫れてるの!」
上履きに履き替えながら、私達はあっと言う間に元に戻った。
な「とも…ごめんね?」
と「何が?」
な「…私のせいで…辛そうだから…」
と「…でも〜」
☆36☆
と「どうして辛そうなのかは、分かってないんでしょ?」
な「……うん…ごめん…」
と「大丈夫!…私もよく分かんないからww」
な「へっ?」
と「分かんない。どうしてあんなに、声を荒げたのか。どうして私が辛いのか。」
な「…そうなの?」
と「うん。…確信が……持てない。」
な「…確信?…そうなんだ…」
よく分からないけど…
ともも悩んでるのか…
と「帰り、31行こっ!」
な「うん!イイよ!」
と「なゆの奢り〜w」
な「エッ!やだぁ〜!」
と「じゃぁ、行かなぁ〜い!」
な「やぁ〜〜だぁ〜〜!」
笑い合うとまた、楽しかった。
はっ!!!
そんな私達と すれ違った……中間先生。
私は無意識に目で追っていた。
っ!!!えっ!!!
振り返った先生は…
「良かったな」と、口パクした。
その嬉しそうな笑顔に…
私は「うん!」と、笑顔で返した。
☆37☆
と「…あ〜…デート…ってか、お礼……どうすんの?」
なんだか心配そうに聞かれた。
な「う〜ん…まだ考えてない。」
と「そっか…」
な「…あのね?……先生…悩み事が あるみたいなんだよね?」
と「…相談されたの?」
な「…そうじゃないけど…なんか落ち込んでるっていうか…言葉の端々に、そんな感情が出てるっていうか……」
と「…分かるんだ?」
な「うん。分かる。…先生の声色が……変わるの。」
と「そっか…」
ともは そう呟くと、ベンチから去り、屋上の高い金網にそっと手を掛けた。
物憂げな その表情は…
あの時の先生の様だった。
と「私さ//……好きな人が…いるみたい//」
私の頬を撫でた柔らかい風が、ともの頬を撫でていく…
まるで…
恋に心を奪われた ふたりを…
包み込んでいる様だった。
あ!
そうだったんだ!!!
☆38☆
あの時…屋上で…
中間先生を見かけた時…
息を呑んだと同時に、胸が跳ね上がった。
私の大好きな、先生の声。
最初に聞いた時は…
それだけで嬉しかった♡
その声で、名前を呼ばれた時も!
相談に乗ってくれると、約束した時も!
本当に、それだけで嬉しかった。
でも今は?
デートしたい……とか…
そりゃあ私だって、ムリな事って分かってるよ?
でもでもでもでもぉーーーーーッ!!!
____________好きって…欲張りなんだ。
もしも…
デート出来たら…
その次、私は…
何を求めちゃうの??
☆39☆
なんだか、闘志が失せた。
先生に会いたい。
でも、会ってしまったら…
これ以上…
好きにならない方がイイのかもな…
担任「なゆ?今日、体育祭実行委員あるからな〜」
あ…そうだった…
嫌でも会っちゃうな…
と「なゆ!中間先生と会えるね?」
な「う、うん…そだね……」
と「…どした?嬉しそうじゃないじゃん?」
な「…会いたいんだけどね…会ったらまた、もっと好きになっちゃうから…」
と「…相手が…先生だから?」
な「まぁ…それもあるかな…w」
なぜか私は、明るくしようと笑顔を作った。
先生の悩みは…
きっと恋の悩み。
そんなの…聞きたくもないし…
はぁぁぁぁ〜〜〜〜っ……
恋って…苦しいな。
☆40☆
放課後。
各クラスの実行委員が集まった。
こないだ作った花達を飾り付けるのが、私の担当。
体育祭が終わったら…
すぐにでも剥がされてしまう入場門の飾り。
初めて中間先生と、ふたりきりで作業した、愛おしいはずの花達なのに…
妙に儚く感じて、私はヤル気が出なく、浮かない顔をしていた。
私を含めて3人の生徒と中間先生で、二本の門の塔を飾り付ける。
中「七色にしたいねん…虹が架かってるみたいに…どうかな?」
美術の先生でも無いのに、そんなこだわりをみせる先生。
生徒「いいじゃん!先生、センスいい〜〜w」
ねぇ!どうして、女子ばっかなのよ!!!
しかも先生に、馴れ馴れしいしッ!!!
気付くと私は、心で怒りを ぶつけまくっていた!
中「なゆと俺で…こっちやろっか?」
な「へっ?…ふたりで…こっち……?」
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。