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2019/04/02

第11話

【放課後、密室、先輩とひみつ】9
浅野大翔
浅野大翔
誤解してた。ごめんね?
上目遣いで笑顔を見せられ、顔が爆発したみたいに熱くなる。
この人は、もっと今以上に自分の顔面の破壊力を自覚すべきだと思う。
西川梨子
西川梨子
じゃあこれからは……、変な意地悪しないでくれるんですよね?
浅野大翔
浅野大翔
え? なんで? 嫌だけど
西川梨子
西川梨子
はい!?
嫌だけど!?
浅野大翔
浅野大翔
最初は確かに誤解してたからだけど、最近梨子ちゃんいじるの面白くなってきたし
思わず、隣の腕をバシッと叩く。
しまった。ついやってしまった。
西川梨子
西川梨子
あっ、ごめんなさい……
怒るかな。怒るよね……。
恐る恐る謝ると、浅野先輩は特に何も気にする様子もなく、叩かれた腕を触った。
浅野大翔
浅野大翔
いいよ、ムカついたときはそうやって叩いたり、文句言って。男が苦手とか言ってさ、結構喋れるじゃん。そっちのがずっといいよ
西川梨子
西川梨子
それは、先輩が……
ここに閉じ込められてから、先輩がずっと優しいから。
ふたりきりで朝までなんてどうしようかと思ったのに、この空間を心地いいとすら感じ始めている。
私の頬は、さっきからずっと熱いまま。
西川梨子
西川梨子
そんなこと言って……、倍返しとかするんじゃないですか
またこうやって可愛くないことを言うと、
浅野大翔
浅野大翔
当たり前じゃん
西川梨子
西川梨子
!?
信じられない言葉が返ってきて、顔面蒼白になりながら先輩を見る。
浅野大翔
浅野大翔
ははっ
こんなに楽しそうに笑っている姿は、見たことがない。
もっと、色んな顔が見てみたい。そんなことを思ってしまう。
西川梨子
西川梨子
私も、誤解してました。先輩のこと……。いつも、隙あらば部活をサボろうとして。しかも女好きで、なんかチャラチャラしてて、適当にやってればそれだけで簡単にエースでいられるんだと……
浅野大翔
浅野大翔
ちょ、多い多い。マジか
笑い交じりのツッコミが入る。
西川梨子
西川梨子
サボろうとするけど……、でも実際にサボったことは一回もなかったのに
ちゃんと、言わなきゃ。伝えたいこと。
今、ここには私たちふたりだけしかいないんだから。
西川梨子
西川梨子
いつも、皆が帰ったあとにひとりで残ってたんですか?
浅野大翔
浅野大翔
あー、まあ……。梨子ちゃんにもバレるつもりなかったんだけどな
浅野先輩は、ばつが悪そうに困った様子で頭を掻く。
西川梨子
西川梨子
何で秘密にしてるんですか?
浅野大翔
浅野大翔
……
私の質問には目をそらし、先輩は少し黙って、観念するようにため息をついた。
浅野大翔
浅野大翔
覚えてる? インターハイ予選でのこと
西川梨子
西川梨子
インターハイ予選? えっと、はい……覚えてます
それは、ほんの数週間前のこと。今では引退した三年生の、最後の試合になった。
浅野大翔
浅野大翔
俺が、最後のPK外した。それで、負けた。俺のせいで
西川梨子
西川梨子
先輩のせいじゃないですよ。だってあの試合は、先輩が唯一点を入れたおかげで、あそこまで繋がったから……
あの後のことは、よく覚えている。浅野先輩が、三年生の先輩に深く頭を下げて……。
驚いた。とても、そんなことをする人には見えなかったから。
浅野大翔
浅野大翔
途中経過は関係ないよ。結果が全て。情けないよな、三年生差し置いてエースとか呼ばれてたくせにさ。あの人たちにとっては、最後のインターハイだったのに。……俺が終わらせたんだ
苦しそうに頭を下げて、この暗さも手伝って、表情が見えない。
見えないのに……、その声で、仕草で、泣いてるように見えた気がした。
先輩にも、弱いところがあったなんて知らなかった。
何も悩みなんてないように見えていて、本当はどれだけのものを抱えていたんだろう。
西川梨子
西川梨子
それでずっと、ひとりで練習を?
浅野大翔
浅野大翔
実は必死こいてエースの座守ってるとか、かっこわるいでしょ。だから
西川梨子
西川梨子
ううん、そんなことないです
それどころか、あんなに苦手だったはずの先輩のことが……誰よりも眩しく見える。

月明かりに淡く照らされて、先輩がやわらかく微笑む。
顔を上げて窓を見上げれば、綺麗な満月がぽっかりと浮かんでいた。
今日は、こんなに月が綺麗な日だったんだ……。
このまま、朝が来て鍵が開けられるまでここにいるしかなさそう。
でも、それでもいいかもなんて、昨日までの私だったら、考えられないことを思ってしまう。
先輩が一緒で、よかった。