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2019/03/28

第9話

【放課後、密室、先輩とひみつ】7
それから、何度かここから脱出する方法を考えたり試したりしてみたけれど、暗いし見えないし先輩は完全に諦めムードで少しも手伝わないし……で、ついに諦めることにした。
先輩が座る席の向かい側の席に着いて、ため息をついた。
浅野大翔
浅野大翔
隣来ればいいのに。寒くない?
西川梨子
西川梨子
大丈夫です……
というか、隣に座るだけで暖かくなるほど、先輩が熱を放出しているとも思えない。
まだ六月上旬。確かに夜は冷える。
ぶるっと身震いして、腕をクロスさせて自分の体を抱きしめた。
こんなことになるなんて……。
西川梨子
西川梨子
あの、ごめんなさい、私で。先輩は、澪先輩と閉じ込められた方が良かったですよね
浅野大翔
浅野大翔
誰とも閉じ込められたくないけど。ひとりででも閉じ込められたくないけど
それはそうか……。正論。私、何言ってるんだろう。
この滅多にない特殊な状況のせいで、変になっているみたい。
浅野大翔
浅野大翔
こうなったのって、どっちかって言うと俺のせいじゃん? 何謝ってんの
こんな状況でも、先輩は笑えるんだ。すごいな。
少し。ほんの少しだけだけど、……ひとりじゃなくて良かったと思っている。
浅野大翔
浅野大翔
つーか、なんで澪ちゃん?
西川梨子
西川梨子
だって浅野先輩と澪先輩、付き合ってるんですよね
浅野大翔
浅野大翔
付き合ってないし。中学から一緒だから仲いいだけだし。へー、梨子ちゃんもそう思ってたんだ
なんか急に不機嫌……?
西川梨子
西川梨子
えっ、付き合ってないんですか? みんなお似合いって言ってるのに。澪先輩綺麗だし優しいし完璧だし。あっ、澪先輩が浅野先輩とか無理なんですかね
浅野大翔
浅野大翔
ちょっと黙ろうか
西川梨子
西川梨子
いたいいたい、ごめんなさい!
手を伸ばしてぎゅうっと頬をつままれて、パタパタ手を振って抗議。
浅野先輩は澪先輩に片想いで、私の言ったことが図星だったのかな。
でも、そっか、付き合ってなかったんだ……。
離された頬を両手で包んでさする。
痛い。それなのに、どうしてだろう。そんなに嫌じゃないと思ってしまうのは。
浅野大翔
浅野大翔
てか、澪ちゃん言うほど綺麗でもなくない? 梨子ちゃんだって可愛いじゃん
西川梨子
西川梨子
……目、悪いんじゃないですか?
ああ、もう、また可愛くないこと言った……。
今日、ブスって言ったばっかりのくせに、可愛いとか言うから。
ちょっと……嬉しいとか思った私は、単純すぎる。
頬が赤くなっている気がして、先輩から目を背けた。
浅野大翔
浅野大翔
梨子ちゃんだってさ
西川梨子
西川梨子
え?
浅野大翔
浅野大翔
知宏と付き合ってんでしょ?
西川梨子
西川梨子
違いますよ、彼氏じゃないです。ただの幼なじみで
浅野大翔
浅野大翔
でも、知宏がサッカー部だから、マネージャーになったんでしょ? 男子苦手っぽいのに、わざわざ
西川梨子
西川梨子
違います! 私がマネージャーになったのは
先輩があまりにも見当外れなことを言ってのけるから、思わず声を荒げて勢いで白状しそうになったけど、直前で止めた。
私がサッカー部に入った理由。それは……。
澪先輩の押しに負けたから? すごく困っているように見えたから?
ううん、違う。それも?ではないけど、私はきっとそんなに綺麗なことは考えていなかった。
……本当は。
浅野大翔
浅野大翔
なに?
私の言葉の続きを待つ浅野先輩と視線が重なる。
あの時、目を奪われた。先輩の姿に。真剣な瞳に。あの瞬間。
だから、私は……。
西川梨子
西川梨子
と、とにかく、知宏のそばにいたいとか、そんな理由じゃありませんから……。あ……男子苦手なのは、当たってます……けど
浅野大翔
浅野大翔
いいよ、苦手なままで。そっちのが遊びがいあるし
西川梨子
西川梨子
そっ、そんなふうに思ってたんですか!?
え、なに? 先輩が今まで私だけに意地悪だったのって、男子が苦手なことを分かっていて遊ばれてたってこと?
上がりかけた株が、ヒューッと急落していく音が聞こえる。
部活中、澪先輩に言われた言葉を思い出す。「梨子ちゃんのことはお気に入りなんだと思うよ」って。
お気に入りっていうのは、おもちゃとしてだったの?
密かにショックを受けていると、先輩はめずらしくため息をついた。
少し、頬が紅潮しているようにも見える。月に照らされただけかもしれないけど。