あの日以来、春には会っていない。
「命の価値ってどうやって決まるんだろうね」
そうブロンドカラーの猫に話しかけた。
千「どうやって決まるんでしょうね」
あたしの呟いた声は千冬くんの耳に届いたらしい。
千「こいつらは商品だけど、命だから。 ちゃんと最期まで見届けてくれる人に引渡したい」
そう言う千冬くんは、悲しそうな顔をした。
もう…死んだ人は戻らないもんね。
知ってるよ…場地さんのこと。
「…じゃあ、あたしに値段を付けるとしたら?」
そんな馬鹿げた質問をした。
千「そーッスね〜…」
なんて、真剣に考えてくれる千冬くん。
「冗談だよ☺️」
千「…一虎くんから聞いたんスけど、なんで 新しく幸せになろうと思わないんですか?」
「春のこと?」
コクンと頷く千冬くん。
「もし、死んでて会えないとかだったら そうするかも。 でも…お互いに生きてたら また会えるから。
それに……春の事を想うのが幸せだなって思うからかな」
あんまり納得のいかない顔をされた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。