『それじゃ、おつぷり~!』
その言葉と同時に、コメントには″おつぷり″と流れてくる。今日は日曜。公式放送の日だ。
ここ最近、溜まっていた仕事を片付けていたので、少し疲れた。ライブも近いからなぁ・・・・・・
優しい仲間達とリスナーさん。ネットで活動しているということもあって、色々と言われるけど、皆を喜ばせるためなら何でもするつもりだ。
しかし、俺らは知らなかった。公式放送がこれで最後なこと。ライブは
一 生 や っ て こ な い こ と を。
プルルルル、プルルルルルと、スマホの呼び出し音がなり、俺は目を覚ました。
出てみると、慌てている感じのさとみ君の声が聞こえた。
そう言われ、俺はテレビをつけた。
『生存者の皆さんは、絶対に屋外に出ず、屋内で待機していてください!』
『ウイルスに感染しないように、消毒も忘れずに・・・・・・石原さん?石原さん!』
血のような塊が見えた映像。その途端に、映像が映らなくなった。
テレビの映像の最後に映っていたものを見て、すべてを悟った。俺の声は震えていた。
そんな俺を悟ったのか、さとみ君の声はとても落ち着いていた。落ち着いていたが、どこか現実だと思っていないような悲しそうな声だった。俺の中で何かが壊れた。
そう言って、電話が切れた。
いつの間にか俺の瞳からは涙が溢れていた。今日は月曜。俺はたまたま仕事がなかったけど、リスナーさんは学校に仕事。朝早くから出掛けているだろう。
″日常″が変わる日。
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編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。