side あなた
1時限目が終わって、10分休みに入る。
途端、クラスメイトたちがあなたの一人称の席を囲った。
なんだろう、と首を傾げる。
突如として始まった自己紹介。
次々に名前を告げられ、そんな一気に覚えられないのだけれど、なんて思いつつ、あぁ、うん、と曖昧な返事を零す。
ただのクラスメイト。仲良しこよしするつもりはサラサラない。
まぁ、とはいえ名前くらいは知っておかないと今後の授業で困ってしまうだろう、と一生懸命覚えることにした。
もうそろそろで夏休み。
どうせなら二学期から学校に投稿し始めればいいのに。タイミング悪すぎ。
そんなことを思いつつも、きっとお父さんに言えば一分一秒でも早く遅れを取り戻すように努力しろ、なんて言われるんだろうな。
嗚呼、嫌いだ。
何もかも。
夏休みはどうのこうのー、なんていう説明を耳から流し、ぼぅ、っと外を見つめた。
あなたの一人称には眩しいくらいの快晴だった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。