前の話
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また 、壁にぶつかってしまったようだ
そう思う時がある 。
例えるなら 、なんだろう
game over と表示された画面を見た時のような
そんなどうしようもない感覚 。
もし 、ゲームなら
ボタンひとつでなかったことになる 。
また振り出しへ戻ればいい 。
リセットされた世界で
見覚えのある道を 初めてのような顔して走るんだ 。
行き止まりにぶつかったらどうしようか
体力が尽きて進めなくなったらどうしようか
走っている途中なのに
game over の文字がちらつく
また電源を落として最初からやり直せば
次は上手くいくんだろうか 。
ため息と一緒に投げ捨てるコントローラー 。
また 、壁にぶつかってしまった 。
ゲームだったら良かった
だけどこれは私の記憶 。
処理しきれなかったセーブデータ
その記録に 、題名はない 。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!