一瞬、私の中で何かが詰まる。何か………心で私が閉ざして封印したかったものが溢れ出しそうになる。
一気に私を暗い暗闇へ……「絶望」へと色が変わる。
あなたはりょうの胸に手を添える。
いきなり、あなたの声のトーンが低くなる。
「どうして殺したの?」この言葉がりょうの心に突き刺さる。
りょうは思わず、めまいがし、頭を片手で抑える。
あなたはりょうの服を摑みかかる。
りょうはあなたの涙に気づかないわけなかった。彼女の目にはうっすらと綺麗な涙ーーーーーー。
そこで、りょうはふと思った。彼女は、「愛して欲しかった」のだと。
全てを父に束縛され、いいように使われてきた彼女らは「愛されている」という実感がなかったのだ。
ああ…。なんてかわいそうだと……。
りょうはそっと彼女の耳元に唇を近づける。
彼はそのまま、静かに彼女の唇に近づいていった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!