第23話
だい。じゅうろく
私は影山ともう1人の車を運転する執事とともに外に散歩に出かけた。
お姉ちゃん…。
お姉ちゃんと一緒なんて…。久しぶりの響き…。
そう呟いたのが聞こえたのか、本当なのかわからないけど
私はそっと影山の手を握りしめ、外の世界へと出た。
もう…。何日ぶりだろう。外に出たのは。
…5日前かな…?
でも。
その時はまだ目が見えていたはずだった。
お姉ちゃんとの思い出が詰まったこの場所。
一緒に服をお揃いで買ったこの場所。
何もかもが思い出。なのに…。何も見えやしない。
私が目を開けていても、見えるのは黒。どこを見ても黒。
草花の緑や空の色。海の色も見えない。
こんな私…。つくづくやだ…。
影山は私の気持ちを察したのか静かに呟いた。
すると
大チャンスがやってきた。
ごめん。影山。
今までありがとう。
私は全力で何もかも、忘れるかのように走り出した。