し〜んと寝静まったシェアハウス。誰も起きているものはいない………………はずだったが。
私あなたは目覚めてしまっていたのだ。
よくわからないが、余裕で深夜だろう。
私は布団を口元まで持って、ムッと考える。
そんなこと、私の人生で一回も思ったことはないのに。………なんでだろう。不思議に思っちゃう。
思わず、私はクスリと笑ってしまった。慌てて、口を閉じる。
彼が寝ているかは定かではなかったが、彼は疲れているはず。寝ているに決まってる。
そう思った矢先。
ツンと頬を刺された。
ふわ〜っとあくびをするエイジの声が漏れてくる。
その様子を見たエイジは私にこう持ちかけてきた。
外からは風の音が打ち付けてくる音がする。……少し怖いな…。
私の脳裏にあの人とあの言葉が浮かぶ。
とクシャクシャと私の頭を撫でるりょうの顔。貴重なものを触るように……。撫でるように私に触れたあの手……。
エイジはそのまま私の方へゆっくりと近づいてくる。
近い……。私の顔の目の前にエイジの顔がある……。
すると、私の耳の前にかかっていた髪の毛をさっと指で払いのけると、そのまま口元を私の耳へと近づけた。
あのクシャって笑った顔。大きな手で私を撫でてくれた…。
モゴモゴしていて気になってしまった。
お互い照れ臭そうに言ったが、今私はどんな顔をしているんだろう…。恥ずかしい……!
2人はそそくさと布団の中に潜ってそのまま眠った。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。