もっきゅんはそっとドアを開けて中を確認する。
その部屋の電気はついていなかった。もう、夜なのに。
もっきゅんは電気をつけると、目の前にはりょうとあなたの姿が。
ただ、2人でいるだけじゃなくりょうがあなたの体を包み込むようにして目を閉じていた。
もっきゅんは静かに2人に近づく。2人ともす〜す〜と寝息を立てて寝ている。
りょうのあなたを抱きしめる手をそっと包み込むように手を添えているあなたの手。
そう感じた。
彼女の欠点を彼は慰め、彼女を悲しませてしまった彼を彼女が慰めているーー。
そんな、ひとつの絵画のように感じた。
もっきゅんは一人で呟き、彼女の元へと近寄る。
近づくと彼女の瞼にうっすらと涙の跡がついていることがわかった。
彼はそっとあなたの頰に手を添えて、涙の跡を指でなぞる。
彼はそっと寝ている彼女にまるで、告白をするように呟いた。
彼女は寝ていて聞こえていない。だが、彼は彼女に伝えるように言葉を紡いだ。
彼は真剣な眼差しで寝ているあなたの顔を見つめた。
彼女の顔はまるで、何も描かれていない真っ白なキャンパスようだ。
何かが起こったら、すぐに染まってしまう。悪や……恐怖に染まってしまいそうで怖い。
でも、モトキはそんなことに恐れずにこう言った。
時計の針は止まらない。チクタクチクタクと父との争いが迫ってきている。
誰にも止められないんだ。
「運命」はすぐそこに。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。