第61話
だい。よんじゅうはちわ
さっきなんて言ってた?
「捕まえた」って?
でも、今私が感じている「何かに覆われる感覚」は何?
ようやく、困惑していた私から出た言葉はそれだった。
りょうは静かに、私を引き寄せてさっきより強い力で抱きしめる。
「今」………。今だけなら………。
りょうは私が頷くと、まるで子犬を撫でるかのようにくしゃくしゃと頭を撫でた。
私は、そっとりょうの私のことを抱きしめている腕から、自分の腕を抜け出して自分の手で顔を覆った。
りょうの追求は凄まじい勢い………。
ついに、私の言葉が詰まってしまった。………不覚だ。
耳元で優しく語りかけるように、囁いた。りょうの息が耳に触れ、少しくすぐったい。
私は思わず顔を伏せ、りょうの胸にもたれかかる。りょうの心臓の音が私に聞こえてくる。
トクン、トクン………。明らかに誰が聞いたって速かった。
私はりょうの顔を見る事ができない。だって目が見えないのだから。私は誰の感情もわからない。
私はりょうが何を考えているのかわからなかった。