第64話

だい。ごじゅういちわ
339
2020/03/28 10:22
今日は新月。月が出ていない夜に、明かりが灯っている家が一軒だけあった。
そこには、苦しそうな顔をする影山がいた。
影山
影山
…………
すると、不意にドアが開き、1人の男が部屋に入ってくる。
失礼しま〜す。
楽しそうな雰囲気をまといながら入ってきた、1人の男。
なぜか、彼にはぞっとするような雰囲気を感じる。
そんなことを気にせず、影山は彼にひとつ、疑問を投げかける。
影山
影山
………あなた様は…元気にやってらっしゃるか?
はい。めっちゃ元気ですね!
影山
影山
食事も?
毎日しっかり食べてらっしゃいます!
影山
影山
……そうか。
影山はほっと胸をなでおろす。
影山は、あなたを取り戻したほうがいいのかと悩んでいた。
あなたは、あの家にいたほうが幸せなのではないかと…………。
影山
影山
………どうすればいいんだ。
何を悩んでるんですか〜?
影山
影山
………あなた様は、あちらにいたほうが幸せなのではないかと。
えぇ?
影山は眉間を歪ませる。
影山
影山
お前も光希様のことは知っているのだろう?
影山
影山
私は………光希様を守れなかった。
影山
影山
せめて……あなた様の幸せを守らないと……!
それがどうしたの?
影山の熱い考えを、冷たく制す。
あの家にあなたがいていいの?
だって、あの家の人たちはyoutuberなんだよ?
会社員でもなく、youtuber。心配じゃないの?
影山
影山
……それはっ…。
影山に反論する隙も与えず、こう続けた。
だって、影山さん、あなたのこと大好きでしょ?
影山
影山
………
男の人はぐるぐると影山の周りを歩き始めた。
自分の近くに、あなたがいない……。
好きな人がいない気持ちねぇ……。
……こうしてるうちに、あなたちゃん、取られちゃうよぉ〜?
影山
影山
それはダメだ!!!
男の人の言葉に、とっさに反応し、大声で叫んだ。
男の人はニヤリと笑い、影山の肩を掴んで、こうささやいた。
大丈夫。俺が、影山さんに情報を流す。
影山さんはいいタイミングで、彼女を取り戻せばいい。そうでしょ?
影山
影山
…………そうだな。
影山
影山
任せたぞ。ツリメ。
ツリメ
ツリメ
………は〜い!
彼は今まで見せたことがない笑顔で、笑ってみせた。

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