第43話
黙々と布団を引くエイジ。私はそんなエイジと話をしてみようと思った。
エイジって…。毎日楽しい?

まぁ…。そらたちがいなかったら楽しくなかったかもな。…めっちゃ楽しいよ。
彼がふっと笑って答えたような気がしたが、気のせいだと思った。

お前はどうなの?
え?

毎日楽しいか?ここにいて楽しいと思った?
……嘘をついてもバレるだろう。いつかは言おうと思ってたこと。…彼なら話しても悔いはない。
私の家は、成績が全てでした。……価値は全て成績で。良ければ良い待遇の「道具」として使われるだけです。

………そうか。
そんな生活が嫌だった。……自由に外に出て見たかった。
遠い場所へ……!
私の目には青空が浮かび上がっていた。…綺麗なブルー。雲。いい空気。鳥たち。
………だから私はお父様に反逆しました。…執事の隙をついて逃げ出しました。…よくないことですが…。

…うん。
逃げ切れないと思った。いつかお父様に捕まると思ってました…。でも………。
私はぎゅっと布団を引くエイジの服の裾をつかんだ。
あなたに出会えた。…仲間に出会えた。これが何よりの幸運です。
ここにきてからドキドキの連続です。……明日が早く来い。そう願ってるんです…!
こんなこと…。家では絶対思わなかったでしょう。

それで?ここに来て楽しい?
楽しいです!…皆さんはこんな私に優しく接してくれて…。なんて幸せ者でしょうか…。
すると、いきなり目の前から温かいものが覆いかぶさった。……嗅いだことがある柔軟剤。
……エイジ?

俺もあなたが来てくれて楽しい。

コソッ)ありがとうな。
耳元でそう囁くと、エイジはそっと離れていった。私が感じることができないと思っていた温かさが離れていってしまった。
………少し寂しく思えた。

ほら。布団を引いたぞ。
エイジはそっと抱きかかえ、布団の上へとおろした。
エイジ……。私は…。
私が言おうとすると、静かに指で口を塞がれた。

今日は何も言うな。疲れてるだろ?慣れてない環境で…。
片方の手でそっと私の頭を撫でる。

おやすみ…。
……おやすみ。エイジ。
私の声とともに、エイジの部屋の電気が途切れた。
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