目が見えないだけでこんなに恐怖に感じるなんて。
私はいつの間にか、歯をガタガタと鳴らしていた。
お父様はここぞとばかりに恐怖を煽る。
私の態度にカチンときたのか、彼の周りの雰囲気が変わった。
何か……禍々しい空気を感じる。
私の心の中の怒りを彼にぶつけるが、彼は笑って吹き飛ばす。
バンと私が座らせられている椅子を蹴り飛ばす。
目が見えない中で、椅子がガタンと揺れるのはとても恐怖に感じた。
すると、彼の周りの空気に間ができるのを一瞬で感じた。
少しずつ、私に空気がかかっていくのを感じる。
私は歯を食いしばって、殴られた衝撃に耐えようとした。
しかし、いくら待っても痛みや衝撃はやってこない。
私は恐る恐る、全身の力を抜くと……
そういえば……彼がこの部屋から去るとき「またね」って言ってた……。
普通だったら「バイバイ」…とか「じゃあね」とか……言うべきなのに…。
言葉をわざわざ選んでたなんて……。
嬉しそうな彼。
あんなことを言っているが、お父様の行動を封じているのだ。
すると、すぐに私の手の周りに巻き付いていたものが緩むのを感じた。
久しぶりの再会に涙をこぼしそうになる。彼らに会う前までは影山がいちばんの理解者だったからだ。
彼の優しい声で泣きそうになってしまう。
ツリメさんを心配する気持ちがいっぱいであったが、彼はどうせ笑顔で「行け」と言っているのだろう。
私は彼のことがずるいと思いながら、影山と共にその部屋を抜け出した。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!