私にはお姉ちゃんがいた。おしとやかで黒髪が似合う、優しいお姉ちゃんだった。誰にも優しくて、学校でも人気があったらしい。
ムギュ)私は、お姉ちゃんに飛びつく。
お姉ちゃんは私のほっぺをつねる。
うまく伝えることができず、お姉ちゃんは大声で笑う。
こんな時間。この時間のために勉強とかお父様の言うことを聞いている。一週間に一回のお姉ちゃんと遊ぶ時間。この時間がくるたびに幸せだった。
こんなに楽しい時間……。ずっとは続かなかった。
いやだったけれど、お姉ちゃんがそう言うなら…
私の返事にうっすらと微笑むと、手を振りながらドアの向こうに消えていった。
あそこで分かっていれば
お姉ちゃんがこうなることはなかった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。