今日は2月14日。バレンタインデーだ。
ツイステッドワンダーランドにもその慣習はある…のだが、ここNRCは残念ながら男子校。ほぼ普段と変わらない1日が流れていた。
──一部を除いて。
フロイドは昨日「はっ!?い、いや、これは小エビちゃんにあげる用とか、そんなんじゃないからねっ!?」と言いながら作ったチョコレートを思い浮かべながらぼんやりとそう考えた。
そしてフロイドは6時間目をサボる決意をすると、鏡舎へ向かった。
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6時間目の終了を知らせるチャイムが鳴ったのを確認してから、フロイドはあなたがいる1ーAにひょこっと顔を覗かせた。
運悪く教室の入り口辺りにいた人達は、フロイドにそう言われ圧にビビりながらもきょろきょろとあなたの姿を探した。
机に突っ伏して休憩していたあなたは、名前を呼ばれて目線だけ上げて声の主を確認する。
そしてそのまま視線を教室の入り口の方へ滑らせて、あなたは目線を元に戻した。
しかし、あなたの隣に座っているオクタヴィネル寮生がそうはさせてくれなかった。
そう安堵の息をついた彼を見て、返事をしなければ良かったとあなたは後悔した。
別にあなたはフロイドが嫌いだというわけではない。ただ、面倒事が嫌なだけだ。
しかし、次の彼の言葉にあなたの気持ちが少し揺らいだ。
この教室が荒れるのはあなたも嫌なので、あなたは明日の食事で手を打つと、上半身を起こし立ち上がった。
あなたが渋々フロイドの所へ行けば、フロイドはぱあぁっと顔を輝かせ、フロイドに詰め寄られていた人達は救世主の登場に涙を流す。
それはフロイドがあなたを気に入っているからなのだが、あなたはそれには気付いていない。
フロイドはすぅ、はぁ、と一度深呼吸すると、後ろに持っていた小箱を差し出す。
急な贈り物にあなたは驚きどうしようか、と戸惑う。
でも彼の性格的に中身が毒だったり爆弾だったりはしないだろう、と短い付き合いながら見抜いてるあなたはここで拒んで暴れられても嫌ですし、と受け取った。
フロイドはそう言うとくるりと踵を返し教室を出ていった。
渡り廊下から吹き込む2月の冷たい風が、火照った頬を冷ますのにはちょうどいい。
気になるけれど、知るのはちょっと怖い。
相反する気持ちを抱えて、フロイドは鏡舎へと走っていった。
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そして放課後。あなたはフロイドからもらった小箱を不思議そうに眺めながら廊下を歩いていた。
1人で小箱とにらめっこするあなたを見つけて、銀髪の青年が近づいていった。
フロイドとは違い普段はあまり絡んでこないアズールが声をかけてくるのを珍しく思いながら、あなたは首を傾げた。
アズールは周りをきょろきょろと見回しこちらを見ている人がいないのを確認すると、透明な袋に入ったチョコレートを渡した。
あなたの鋭い質問に、アズールの肩がビクッと跳ねた。
わざわざ不自然でない理由を作って渡しに来たのに、まさかそこを聞かれるなんて…とアズールはあなたの鋭さを侮っていたのだと痛感する。
まぁ、あなたは単純に気になったから聞いただけで、そういう意図は全くなかったのだが。
アズールは口早にそう言うと、そそくさとその場を去っていく。
一体何がしたかったのだろう、とあなたは心底不思議そうに彼の背中を見つめた。
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多少古くても住めば都というのか、あなたはオンボロ寮に少し愛着を持っていた。
学園の喧騒から離れたこの静寂を心地よく思いながら、あなたはブレザーを脱ぎ談話室に入る。
そんな事をのたまいながら優雅に紅茶を飲むジェイドを見て、こちらが折れるしかないのだと悟ったあなたはため息をつくと所々破れかけているソファに腰掛けた。
ジェイドがにやりと笑いながらカマをかけてみれば、あなたはすぅと目を細めながらそう返した。
その声が刃を突き付けるような、冷たく突き放すようなもので、ジェイドは眉を下げる。そこまで露骨に壁を作られるとは思っていなかった。
ジェイドはゆっくりと首を横に振ると、それより、と黒い小さな紙袋をテーブルの上に置いた。
ジェイドはちら、とあなたが持って帰ってきた贈り物を見ながらそう言った。
あなたの言葉を聞いて、ジェイドは無自覚だったのか、と驚く。
あなたの事だから、分かっているのだとばかり思っていたのに。
ジェイドはそれだけ言うと、オンボロ寮から去っていった。
1人残されたあなたは2月14日、14日…と記憶を辿り、そして顔を真っ赤にした。
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はい。無事テストでタヒんできました、カイです()
ん?バレンタインはもう終わった?エッナンノハナシデスカネーオレヨクワカンナァイ()
いや…ね?いっぱい書いたから許してくだs(((遅れてすみませんm(_ _)m
あっ俺の雑談部屋に上目遣いでチョコをギヴィングしてくれてるふよたん(=フロイド)がいますよろしければ覗いてみてくだs(((宣伝すな
あっ気付いたらいいね100いっててめちゃ嬉しかったですありがとうございます!!
それではまた。バイバイッ。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。
登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。