第14話

監督生です。狸(?)の世話係になります。
508
2022/02/19 23:01
本で読んで知っている事も知らない事もある授業を適度に集中して受け、そして4限。
この時間は実践魔法の授業で、魔法が使えない設定になっているあなたは見学をする事になっていた。
(なまえ)
あなた
(んですけど…。)
(なまえ)
あなた
(いや…暇すぎません??)
遠い目になりながら喧騒から少し離れた所に座ってあなたはただただ時間が流れていくのを待つ。
(なまえ)
あなた
(う~ん…。せっかくですし今朝の事について考えますか…。)
(なまえ)
あなた
(今朝のあの魔力の乱れ方…よっぽど魔法、というか魔力の操作が下手じゃない限りあんな風にはなりませんよ…。)
(なまえ)
あなた
(でもあの人は特別苦手なわけではないらしいですし…それにアズールさんも…)
????
…ぁ、なあっ!
(なまえ)
あなた
っわ、誰ですか…っ?
考え込んでいた所にいきなり声をかけられ、あなたはビクッと身体を跳ねさせる。
そんなあなたを見てテラコッタの癖っ毛を持つ青年はくくっと肩を揺らした。
????
お前、驚きすぎ…っ。それと、クラスメートの名前も覚えてねぇの?まぁ、まだ始まったばっかだから無理もないけどさ。
何だか引っかかる言い方をする彼にあなたはムッとしながら言う。
(なまえ)
あなた
そんなのはどうでもいいですから。僕はあなたの名前を聞いているんです。
????
あぁ、ゴメンゴメン。
エース
エース
オレはエース。エース・トラッポラ。よろしくな、あなた。
(なまえ)
あなた
よろしくお願いします、エースさん。
(なまえ)
あなた
…ところで、あなたはサボりですか?
向こうではまだ生徒達がマジカルペンを振り魔法の練習をしている。授業中なのに一体なぜこちらに来たのか。あなたが不思議に思いそう問えば、エースはサボりなのはあなたも同じだろ?と笑った。
エース
エース
今日は課題が終わったヤツから終わっていいんだって…ってその事知らないって事は、お前見学すらしてなかったの…?うっわマジでサボりじゃん。
(なまえ)
あなた
うるさいですねぇ…あなただって約1時間授業を見ているだけ、とか耐えられないでしょう?
エース
エース
…いや、まぁ、それはそうだけど、さ?
と、その時、生徒達がいる方からうわー!と叫び声が聞こえた。
(なまえ)
あなた
何の騒ぎですかっ!?
エース
エース
おい!あれ、見てみろよ!
エースにそう言われあなたは視線をグラウンドの中央へ向ける。
そこでは、どこかで見た事のあるような生物が火を吹き暴れていた。
グリム
グリム
はっはー!そんな弱っちい魔法なんかよりオレ様の魔法の方がすごいんだゾ!ふな゛~っ!!
モブ
うわっ、熱っ!
モブ
やばっ、逃げろ!
(なまえ)
あなた
あれって…入学式で暴れまくってた狸(?)さんじゃないですか。
狸、という言葉にピクリとその魔物──確か、グリムといったか──の耳が揺れ、そしてその青い瞳がこちらを向いた。
グリム
グリム
あー!!オマエ、入学式の時に魔力がないって言われてたヤツなんだゾ!?どうしてこの学校に通ってるんだ!?
(なまえ)
あなた
どうして、と言われましても…。
(なまえ)
あなた
それより、グリムさん?こそ何でここにいるんですか?
グリム
グリム
それはオレ様がこの学校に通うべき大天才だからなんだゾ!
(なまえ)
あなた
(あっだめですねこの子話が通じません)
あなたが意思の疎通を諦めかけていたら、「それよりも!」とグリムはあなたの所まで走っていき、そして胸を張ってこう叫んだ。
グリム
グリム
魔法が使えないヤツなんかより、オレ様の方がNRC生にふさわしいんだゾ!オレ様にその席を譲るんだゾ!!
そしてあなたが魔法を使えないと思っているのに炎で攻撃する。
先生も含めた皆が顔を青ざめさせる中で、あなたは涼しい顔でひょいと炎をかわした。
(なまえ)
あなた
(ふぅん…。魔法の威力はそこそこですが、コントロールが甘いですね。これなら…。)
あなたは狙いを付けるような素振りも見せず火を吹きまくるグリムを一瞥した後、すっと身体を横に向け当たりそうだった炎を避ける。
右、左、と軽い足取りであなたは飛んでくる火の塊をかわしながら、グリムの方へと近づいていく。
グリム
グリム
っ…何で当たらないんだゾ!?
(なまえ)
あなた
それはあなたのコントロールが下手だからじゃないんですか?
グリムの怒りに合わせて、ボウッと炎の勢いが増す。
感情が乱れれば魔法の精度が下がるのは当たり前なのに、と考えながらあなたはその場でくるりとで回り、自分の後ろへ飛んでいく火の玉を見ながら、グリムの頭にポンと手を置いた。
(なまえ)
あなた
(えぇっと…魔力の流れを乱す感じで…“魔力妨害ディスターブ”)
グリム
グリム
くっそ!オレ様の頭に許可なく触りやがって!燃やしてやるんだゾ!
グリム
グリム
ふな゛ぁっ!……ってアレ?炎が出ないんだゾ!?
グリムはふなっ!ふなぁっ!と何度も火を出そうとするけれど、そのイメージが具現化する事はなかった。
あなたはそれを見て魔法が成功した事を悟ると、呆れ顔でこう言った。
(なまえ)
あなた
あんなに炎をたくさん出すから魔力が切れたんじゃないですか?
もちろんこれは嘘だ。グリムにはまだ魔力があるのは、分かる人が見れば分かる。
しかしグリムが今までたくさん火の魔法を使っていたのは事実で、見ていた生徒達はそうなんだ、と見事に騙されてしまった。
グリム
グリム
ぐぬぬ…オレ様の魔力はまだあるはずなのに…。
グリムはそうあなたを睨むが、あなたから見たらそれはただの可愛らしい上目遣いである。
あなたが動じないのをグリムは悔しそうに見て、そしてハッとある事を思い付いた。
グリム
グリム
そうだ!おい、オマエ。名前は何て言うんだゾ?
(なまえ)
あなた
僕ですか?あなた、ですけど…。
グリム
グリム
じゃああなた!オマエをオレ様の子分にしてやるんだゾ!
(なまえ)
あなた
……はい?
─────────────────────
(なまえ)
あなた
…というわけです、学園長。
そして授業後。あなたはグリムと共に学園長室に来いと呼び出しを食らい、ついて来ようとするフロイド達を何とか撒き学園長室に来ると、事のあらましを説明していた。
クロウリー
ふむ…なるほど。またこの狸さんが学園に侵入してきたと…。
グリム
グリム
だからオレ様は狸じゃないんだゾ!
あなたの腕の中でジタバタと暴れるグリムを押さえながら、「それで、どうします?」とクロウリーに問う。
クロウリー
そうですねぇ…。やはり学園の対応としては部外者は追い出すのが正しいのでしょうが…。
グリム
グリム
ふなっ!?
ちらりとクロウリーに見られしゅんと耳の炎を弱くしたグリムを見ると、(自称)優しいクロウリーは出ていけなどと冷酷な事は言えない。
クロウリー
でも、あなたさんはグリムくんに懐かれているみたいですし、ここはあなたさんにグリムくんのお世話係になってもらおうと思います!
(なまえ)
あなた
…っえ?
クロウリーの言葉にグリムはぱああぁっと顔を明るくし、あなたは少し顔を曇らせた。
このいかにも面倒くさい性格をしている狸のお世話をしろと…?とあなたは助けを求めるような視線をクロウリーに送るけれど、クロウリーはどこ吹く風で話を進める。
クロウリー
そうしたらグリムくんはNRCで魔法を学べますし、魔法の使えないあなたさんはグリムくんを手懐ければ魔法で自分の身を守る事が可能になります。まさに一石二鳥!こんな素晴らしいアイディアを思い付くなんて、私、天才では?
確かにその話は魔法が使えない者にとっては良い話かもしれない。
しかし残念ながらあなたは魔法が使えるのである。しかも、その実力はかなりのもの。
なのでここは遠慮などせず断ってしまおうとあなたは口を開きかけ、グリムに止められた。
(なまえ)
あなた
あの…
グリム
グリム
ちょっ、ちょっと待つんだゾ!まさかオレ様を追い出せなんて言うつもりじゃあ…。
(なまえ)
あなた
そのまさかですが…何か?
グリム
グリム
そっ、それはやめてほしいんだゾ!一生のお願いなんだゾ!
グリムが瞳をうるうると潤ませそう見上げてくるものだから、あなたはうっと言葉に詰まってしまう。
そんな、そんな可愛い顔で見られても…と心が揺れている所にクロウリーからこの一言。
クロウリー
では、よろしくお願いしますね、あなたさん!
クロウリー
あぁもちろん、グリムくんの分の生活費は増やしますから。そこはご心配なく。
(なまえ)
あなた
…はぁ、分かりました。やればいいんでしょう?
結局あなたはグリムの可愛さとクロウリーの圧とお金に折れたのであった──。
*      *      *
どうも、朝からこんな事やってます、カイです。
今回はエースくんとグリムが登場しましたね!グリムのイラスト地味に難しかったです…。
…えっ?もう1人のマブはどこ行ったんだって?これから出てきますよ(きっと)
今回オクタのオの字もありませんでしたけど、次回はむしろ監督生とオクタしかいないぐらいですから。まぁこの話と足して2で割ればちょうどいいでsy(((
それではまた。バイバイッ。

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