第3話

監督生です。先輩に噂されます。
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2021/12/05 00:48
あなたが去っていった後の、朝日の差し込む図書館で、ターコイズブルーの髪を持つ青年────もとい、フロイド・リーチは独り寂しく本を片付け(流石に手作業でやるのは面倒くさいので魔法で片づけた)、そしてオクタヴィネル寮の廊下を歩いていた。
フロイド
フロイド
あ~も~!ホント何だったのさアイツ!
フロイド
フロイド
でも……。
フロイドはふと目を閉じ、あなたの見せた笑顔を思い出す。
フロイド
フロイド
(いや…ね?やっぱああいうのってアイソワライってヤツなんだろうけど……。
でも…アズールとかジェイドがするよりずっと……。)
そこまで考えて、いや何オレ会ったばっかのヤツの事考えてんの!?とフロイドはブンブン頭を振る。




そうこうしている内に、フロイドは目的の部屋の扉の前に来ていた。
自分の部屋よりいくらか豪華な扉を開け、フロイドはその部屋に入る。
フロイド
フロイド
ただいまぁ、アズールぅ、ジェイドぉ。
ジェイド
ジェイド
お帰りなさい、フロイド。
アズール
アズール
遅かったじゃあないですか。何かあったんですか?
アズールにそう問われ、フロイドは彼ならあの図書館で会った生徒の事を知っているかも、と思い、早速聞いてみる。
フロイド
フロイド
それがさぁ、図書館でなぁんか不思議なヤツに会ったんだよねぇ。
アズール
アズール
不思議なヤツ、とは?
フロイドはあの人の事を思い出しながら、こう答える。
フロイド
フロイド
ん~とねぇ、茶髪の小っちゃいコでさぁ、多分制服の感じからして1年生だと思うんだよねぇ。
でもさ、防御魔法使えたの。それもショートキャストで!
アズール
アズール
1年生で、防御魔法、それにショートキャストだって!?
フロイドの言葉を聞き、普段は見られない驚きの表情を浮かべるアズールに、こちらも感情を隠すのは得意なのに思わず目を丸くするジェイド。
ジェイド
ジェイド
ショートキャストだなんて、僕達でも100%の成功率で使えるものではありませんよ?
魔法を使う時に、呪文と魔法名の両方を唱えるのがフルキャストで、大抵の魔法士はこの方法で魔法を使う。もちろん、NRCでもこの方法を習う。
そして、魔法名のみを唱えるのがショートキャスト。あなたが使っていたものだ。
ちなみに全く詠唱せずに魔法を使用するのはノンキャストという。
だがショートキャストやノンキャストで魔法を使用するのはもちろん難しく、成功率は大幅に下がる。
しかしあの人はそれをやってのけたのだ。しかもあの失敗出来ない状況で。
フロイド
フロイド
そ。だから、さ?
フロイドはそこまでしか言わなっかたが、アズールとジェイドにはちゃんと通じた。
アズール
アズール
ジェイド。新入生の名簿は持っていますか?
ジェイド
ジェイド
えぇ、もちろんです。写真付きですよ。
アズール
アズール
流石です。
……しかし、茶髪の人、という条件だけではたくさんいるので絞り込むのが難しいですねぇ…。
フロイド、その人の所属寮は分からないのですか?
フロイド
フロイド
ん~……腕章は隠されちゃてさぁ…。
でもさ、そいつ制服のジャケットの下にさ、パーカー着てたの。
ジェイド
ジェイド
そうですか…。それならベストの色も分からないのでしょう?
フロイド
フロイド
ま、それはそうなんだけどね。
でもさぁ、ルール違反に厳しい金魚ちゃんとか、身だしなみに気を遣うベタちゃん先輩とかだったらそういうの許されないと思うんだよねぇ…。
フロイドの言葉に、アズールとジェイドははっとした。
アズール
アズール
まぁそれはあくまでも憶測の域を出ませんがね。
…フロイド。その人はあなたを見てどんな反応をしましたか?
フロイド
フロイド
えっとね、人に見つかっちゃった、っていうのと、あとオレも守んなきゃいけねぇのが面倒くさかった、って感じかなぁ…。
ジェイド
ジェイド
…それなら、オクタヴィネル寮生ではありませんね。
もし寮生であれば、昨日自己紹介した副寮長────まぁ正確にはその兄弟ですが────がいる事になるのですから、驚いたり言い訳をしたり…あと名前を呼んだりするでしょうし。
フロイド
フロイド
あー…何?「すみません、リーチ副寮長!」みたいな?確かに新入生はよく間違えるもんねぇ。
アズール
アズール
あとフロイド、その人が小柄だと言いましたが具体的にはどのくらいだったんですか?
フロイド
フロイド
金魚ちゃんと同じくらいじゃねぇ?
アズール
アズール
ならサバナクロー生でもないでしょう。あの人達ならもっと大柄でしょうし、魔法ではなく物理で解決しそうです。
フロイド
フロイド
あはっ、確かにそうだねぇ。
あとねぇ、愛想良かったからホタルイカ先輩のトコのヤツでもなさそぉ。
ジェイド
ジェイド
となると残りはスカラビアとディアソムニアですね。
ここまで絞り込んだらかなり調べるのが楽になります。今日の正午までには候補者をピックアップしておきます。
フロイド
フロイド
よろしくねぇ、ジェイド。
かなり偏見に満ちた絞り込み方だったが、今回は間違いでもなかった。まぁ、正解でもないのだが。
ここで1つ不幸だったのは、入学式に出席していたアズールとジェイドがあなたの姿を見ていなかった事だろう。
もし見ていたのなら、すぐに分かったのだろうに…。
しかし当人達にそれを知るすべはなく。
結果、彼らはいるはずのない生徒をスカラビアとディアソムニアの寮生の名簿から探すのであった────。






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(なまえ)
あなた
ックシュン!……誰か噂でもしているんですかね…?
あなたは自分以外誰もいないオンボロ寮でそう呟いた。
(なまえ)
あなた
(いや~にしても学園長が来ていなくて良かったです…。
もし無断外出がバレたらどうなっていたか…。)
あなたがホッと胸を撫で下ろしていたら、コンコン、と扉を気遣っているのか少し小さいノックの音が聞こえてきたので、あなたはビクッと肩を跳ねさせた。
クロウリー
あなたさん、いますか?
(なまえ)
あなた
はい、どうしました?
あなたはパタパタ────いや、ギシギシと所々腐っているであろう木の床を歩いて、扉を開けた。
そこでは、クロウリーが、銀色のトレーを持って立っていた。
トレーの上には、バゲットや目玉焼きにソーセージ、それとコーンスープと、ホカホカのご飯が乗っている。
それを見て、あなたのお腹がぐぅと鳴った。
クロウリー
あなたの朝ごはんですよ。食堂で作ってもらいました。私、優しいので。
(なまえ)
あなた
ありがとうございます、頂きますね。
いかにも胡散臭いクロウリーの口癖をまたこれか、とあなたは軽く聞き流し、それから隙間風の吹き込む談話室で朝食を食べた。





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こんにちは、カイです。
今回はフロイド視点(最後ちょっと監督生)でお送りしました。
オクタの3人の間でポンポン交わされる会話を書くのが好きなので、文を書く事自体には苦労しなかったけど……アイコン…イラスト…大変でしたね、ハイ()特にアズの髪とか…。
でもこの苦労は今だけなんだ、1回描いたら多分もう描かなくていいんだ、頑張れよ、俺ぇ!!
というわけで(どういうわけだよ)、また次の話で。

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