あなたが去っていった後の、朝日の差し込む図書館で、ターコイズブルーの髪を持つ青年────もとい、フロイド・リーチは独り寂しく本を片付け(流石に手作業でやるのは面倒くさいので魔法で片づけた)、そしてオクタヴィネル寮の廊下を歩いていた。
フロイドはふと目を閉じ、あなたの見せた笑顔を思い出す。
そこまで考えて、いや何オレ会ったばっかのヤツの事考えてんの!?とフロイドはブンブン頭を振る。
そうこうしている内に、フロイドは目的の部屋の扉の前に来ていた。
自分の部屋よりいくらか豪華な扉を開け、フロイドはその部屋に入る。
アズールにそう問われ、フロイドは彼ならあの図書館で会った生徒の事を知っているかも、と思い、早速聞いてみる。
フロイドはあの人の事を思い出しながら、こう答える。
フロイドの言葉を聞き、普段は見られない驚きの表情を浮かべるアズールに、こちらも感情を隠すのは得意なのに思わず目を丸くするジェイド。
魔法を使う時に、呪文と魔法名の両方を唱えるのがフルキャストで、大抵の魔法士はこの方法で魔法を使う。もちろん、NRCでもこの方法を習う。
そして、魔法名のみを唱えるのがショートキャスト。あなたが使っていたものだ。
ちなみに全く詠唱せずに魔法を使用するのはノンキャストという。
だがショートキャストやノンキャストで魔法を使用するのはもちろん難しく、成功率は大幅に下がる。
しかしあの人はそれをやってのけたのだ。しかもあの失敗出来ない状況で。
フロイドはそこまでしか言わなっかたが、アズールとジェイドにはちゃんと通じた。
フロイドの言葉に、アズールとジェイドははっとした。
かなり偏見に満ちた絞り込み方だったが、今回は間違いでもなかった。まぁ、正解でもないのだが。
ここで1つ不幸だったのは、入学式に出席していたアズールとジェイドがあなたの姿を見ていなかった事だろう。
もし見ていたのなら、すぐに分かったのだろうに…。
しかし当人達にそれを知るすべはなく。
結果、彼らはいるはずのない生徒をスカラビアとディアソムニアの寮生の名簿から探すのであった────。
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あなたは自分以外誰もいないオンボロ寮でそう呟いた。
あなたがホッと胸を撫で下ろしていたら、コンコン、と扉を気遣っているのか少し小さいノックの音が聞こえてきたので、あなたはビクッと肩を跳ねさせた。
あなたはパタパタ────いや、ギシギシと所々腐っているであろう木の床を歩いて、扉を開けた。
そこでは、クロウリーが、銀色のトレーを持って立っていた。
トレーの上には、バゲットや目玉焼きにソーセージ、それとコーンスープと、ホカホカのご飯が乗っている。
それを見て、あなたのお腹がぐぅと鳴った。
いかにも胡散臭いクロウリーの口癖をまたこれか、とあなたは軽く聞き流し、それから隙間風の吹き込む談話室で朝食を食べた。
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こんにちは、カイです。
今回はフロイド視点(最後ちょっと監督生)でお送りしました。
オクタの3人の間でポンポン交わされる会話を書くのが好きなので、文を書く事自体には苦労しなかったけど……アイコン…イラスト…大変でしたね、ハイ()特にアズの髪とか…。
でもこの苦労は今だけなんだ、1回描いたら多分もう描かなくていいんだ、頑張れよ、俺ぇ!!
というわけで(どういうわけだよ)、また次の話で。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!