(taiga side)
あれから、北斗さんとは少し距離があるように感じる。避けられてるような……。
なぜたか、胸のあたりがざわざわする。
やっぱり、俺みたいな人間の底辺の人物拾って後悔してるんだろうな。
そんなことを思い始めている。
秘書の研修も無事終わり、夏になった。
執事のジェシーから、とんでもない初めての仕事を言い渡された。
「んん!!なに、今女装って言葉が聞こえたんだけど。何かの聞き間違い?」
ジェ「ちがうよ。来週、社長就任から5年を迎えてさ、その祝賀パーティが開かれるんだ。そこで、何かとココ最近、家の会社に迷惑をかけてくる、深澤という男を捕まえてほしい。」
「ただ、捕まえるだけなのに、なんで女装なの??」
ジェ「ハニートラップ。」
ん?ハニートラップ?
なにそれ、美味しいの??
みたいな顔をしたら、ジェシーの顔がみるみる青くなってきて、
ジェ「え、もしかして大我知らないの??マフィアの人とかがよくやってるアレだよ。」
「ごめん、ジェシー。俺、本とかあんまり読んだことなくて。なにせ生きることに精一杯で。」
あちゃ〜。というように頭を抱えるジェシー。
ジェ「よし!!じゃあ、残りの時間でそういうことに詳しいやつここに連れてくる!!レッスンしないと北斗さん怒っちゃうよ。北斗さんにも一応伝えておくね〜」
そう言って、部屋から出ていった。
“ハニートラップ”
その言葉の意味が気になって仕方な買った俺は、パソコンにその文字を入れた。
出てきた言葉は衝撃的なものだった。
ー《甘い罠の意》機密情報などを得る目的で、スパイが色仕掛けで対象(外交官や政治家・軍関係者など)を誘惑したり、弱みを握って脅迫したりする、諜報活動のこと。主に、女性の諜報員が男性に仕掛けるものをいう。
「え、、、」
つまりは、ああいうことを俺がねだって部屋に連れ込んでってことだよね…。
しかも、女性のって……。
俺男なのに涙
そんなこんなで、心配で心配でたまらなかったある夜の事。
ジェシーが言ってた、そういうことに長けている人が屋敷にやってきた。
ジェ「紹介するよ。こちら、樹。」
今まで見てきた中で一番妖艶かもしれない男、
樹「田中 樹です。よろしくね、きょもくん?」
そいつが俺の運命を揺らがす存在になるとは、
このとき思っても見なかった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。