疲れた。どれくらい歩いただろう。
あといくらお金残ってるかな。
疲れた。疲れた疲れた疲れた疲れた、、!
少し寝よう。
あなたは丸三日間何も食べず、水だけで歩き続けた。
15歳のあなたの身体は既に限界を超えていた。
東京都大田区のとある路地裏で三日間ぶりの眠りについた。
微かに声が聴こえた。
あなたは重い瞼を開き、しっかりと前を見た。
男だ。
二人組の黒い男。
その身体にはいくつものタトゥーが刻まれており、二人とも黒いサングラスをかけていた。
あなたはいつも通りの甘えた声で言った。
ちっ。バレたか。
あなたは強気に言った。
“隼人”というドレッドヘアーの男は軽く会釈をした。
あなたは食いぎみに聞いた。
そのままタクシーに乗ってその男の家へと向かった。
意外にも広い家。
高そうな一軒家。
このドレッド男、料理なんか出来んのかよ。
炊きたてのご飯に、ワカメのお味噌汁。
ふわふわの卵焼きに、ほうれん草のおひたしまで、、。
家でのご飯はいつだって菓子パンに水道水。ときどき、雨水。
久しぶりすぎる。こんな美味しそうなご飯。
自然と涙が溢れた。
あなたは思わず家を飛び出した。
同じだった。
あの味噌汁の味が。
遠い昔、父が出ていく前の優しかった母の味噌汁の味と。
あなたはなにも言わず、黒崎の後について家に戻った。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。