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正「  そろそろ帰るわ、」

『 うん、明日また早いんやろ？ 』

正「 明日会議やからな、
        言うて俺は何もせえへんけど、」

はは、と笑えば ささっと身繕いして

正「 急に来たのにありがとう、美味かった 」

『 それはよかった、』

正「 じゃ、また明日 」

『 ん、じゃあね、』

玄関から出ていこうとした時

正「 あ、そうだ 」

急に正門が振り返って、

正「 また…来てもいい？ 」

今日だってそうだったように、正門が
いちいち私に許可なんて求めた事は少ない。

『 なに？笑今までそんなん言わんかったやん 』

正「 そやけど… 」

正門は何か言いたげに俯いた、

正「 なんでもない、じゃ、」

バタンと扉が閉まり、スタスタと靴の音が聞こえた。

変なやつ。

私も明日の仕事があるし、
まだ持って帰ってきた仕事も残ってる。

仕事片付けるか、とパソコンを開くと、

末「 なぁ、誰なん、あいつ。」

いつの間にか人間に戻っていた誠也くんが
隣に座ってきた。

『 仕事の同期。』

末「 いつもあいつと仕事してるん？ 」

『 それが多いかな 』

誠也くんの方は見ず、パソコンに打ち込みながら
答える。

末「 あなたちゃん、」

『 ん？ 』

末「 俺、ちゃんとええ子にしてたで？ 」

威嚇丸出しだったけどね、なんて言えば
きっと拗ねちゃうだろうと思い、

『 それはほんとに助かった、ありがとう。』

末「 俺、頑張ったからご褒美、」

『 あー、何がいい？ジャーキー？ 』

末「 バカにしてるん？ 」

『 してないよ、何がいいん？ 』

末「 ちゅー 」

予想外すぎる答えに、
思わず彼の方を見てしまった。

その瞬間、

ちゅ、という音と共に時が一瞬止まった。
何この感触。柔らかくてでも、だんだん
熱を帯びてくような、じんわりと。

そんなことを考えてるうちに、すっと
離れていった。


末「 へへ、ご褒美もらった 」

まだ思考回路が停止したまま何も出来ないでいると、

末「 あなたちゃん、大丈夫？ 」

目の前で手をフリフリされて、ようやく
戻ってきた。

『 うん、大丈夫、大丈夫 。』

全然大丈夫じゃない、
大丈夫じゃない、

もちろん経験したことがない訳では無い。
でもなんなんだ、これは。

今日はみんなおかしい。



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