．




『 誠也くん、私まだかかりそうやから
    先お風呂入ってきていいよ？ 』

納得いかない文ばかりでさっきから全然
進まない。

「 え、わかった、」

『 正門にぐしゃぐしゃされた髪はちゃんと
    綺麗にしてあげるから、さ？ 』

「 へへ、やった、」

じゃ、入ってくる〜 と、お風呂場に向かった
誠也くん。
そう言えば、誠也くんの部屋着もパジャマも
下着もなんもないな、と気づいた。

いや、でも今はこれに集中しよう。
明日までには完成させていたい。


今日の正門、変だったな。
あんまり美味しくなかったのかな。
いや、でもそうならまた来たいなんて
言わないよな、なんだったんだ。

って、また。気が散ってるやん、
どうしよ、全然集中出来ひん。


『 はぁ… 』

思わず出てきたため息。

「 深いため息やな 」

『 びっくりした、もう上がったん？ 』

「 うん、気持ちよかったで 」

『 なんで上着てへんの 』

上も持っていったはずなのに。

「 暑いもん、」

『 風邪ひかんといてね？ 』

「 ん、分かってる。あなたちゃん疲れてるな 」

『 そんな事ないよ 』

「 無理、したらあかんで？ 」

『 …ありがと、誠也くん 髪の毛乾かそか 』

「 やって、やって 」

イヌみたいに(比喩としてあってるのか)
ドライヤーを取りに行く誠也くん。

自然と笑みも零れた。誠也くんがうちに来て
まだ少ししか経ってないけど、
なんだか明るくなった気がする。

「 お願いします、」

『 はあい、』

スイッチを入れればお互いの声なんてほとんど
聞こえないくらいの風の音がする、

私より少しだけ背の高い彼。立ったままだと
やりにくいという事で、洗面台の前にイスを
持ってきてもらって、誠也くんは座ってる。

鏡越しに目が合うと凄く嬉しそうに笑ってくれて
まるで子犬がしっぽを振ってるかのような
(だから、これは比喩なのか)
表情をしてるのがたまらなく可愛い。

『 おしまい、』

「 ええ、すごい、サラッサラやで 」

『 お兄ちゃんが美容師やからね、見てたの 』

「 あなたちゃん、お兄ちゃんおんねや 」

『 うん、5個離れたお兄ちゃん。』

「 仲良し？ 」

『 まあまあかな、笑 』

「 そか、笑 あなたちゃんお風呂入ってきたら？ 」

『 そうする、』


誠也くんに勧められて、一旦お風呂で
リラックスしてくることにした。


．