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『 せいや…くん…? 』
「 ごめん、」
彼女は戸惑った目をしてた。
いつかと同じような。
ああ、思い出したくもない思い出が
もうここまで出かかっている。
『 寝よか、』
何事も無かったかのように笑ってた。
「 うん、」
それしか言えなかった。
まさかど。顔とそれしか知らない。
そんな相手に妬いてるなんて。
『 正門、急に声が聞きたくなったんだって 』
「 ふーん、」
『 誠也くんの。』
「 え? 」
『 昼来たでしょ?そんときの鳴き声が聞きたくなったんだって 』
「 なんで、俺の 」
『 知らないよ、動物好きやからね 』
俺の声?
あなたちゃんの声じゃなくて?
俺の勘違い?
『 顔赤い 』
「 へへっ 好き 」
『 はいはい、』
なあんだ、笑
なんて、油断してる場合じゃなかった。
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編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!