まるで自分たちがしていることが正義で、大塚さんが悪だと言うような空気が私たちの間に蔓延る。
そんなこと辞めなよと友人をたしなめる言葉を発する機会はいくらでもあったのに、私は言えなかった。
彼女の正義を否定すれば、今度は私が悪にされるかもしれない。
そのことを恐れて、私は口をつぐんで周りに流されることを選んでしまった。
最低なことをした私に、助けを求める必要なんてない____。
空いていた席が埋まる。ちらりと横目で確認する。すると、大塚さんは眠たそうに頬杖を着いていた。
私は目を閉じて4月の頃を思い出す。
日直の子が黒板を消してないことに気づき慌てて消し始めた。明らかに文字が多かったためか誰も手をかそうとはしない。
その中で真っ先に立ち上がり手伝ったのは大塚さんだった。
めんどうだからとみてみぬふりをするひとたちばかりのなかで大塚さんだけはいつも違っていた。
同じクラスになって大塚さんのことを知ってから、彼女は私の憧れとなった。
きっかけがなくでなかなか話しかけられないけれど、話してみたい、仲良くなりたい、と密かに思っていたのだ。
それなのに私は己の保身を選んだのだ。
見にくくて最低な自分に嫌気がさす。
___呼吸が上手く出来なくなって、鼻から息を吸い込み肺に落としていく。そしてゆっくりと吐き出した。
お昼のお弁当は誰もいない2階の空き教室でひっそりと食べた。
一人で食べる時間が1番安心した。
私は、どうすれば良かったのだろう____。
裏提示版に書かれたことは誤解だよ。事情があるんだよと伝えても、全部無視されてしまった。
友達である私の言葉よりも、顔の見えない誰かが書いた提示版の噂の方を信じる。
その事実に私という人格が否定された気がして、ことごとく打ちのめされた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。