ホールルームが終わり、教室が一気に騒がしくなる。
私は教科書をカバンに入れようと机の中に手を入れた。
その瞬間、手に柔らかいものが触れた。
咄嗟に手を引いて恐る恐る机の中を覗き込むと____
「____っ!」
それは友達が好きだと言って誕生日にプレゼントしたぬいぐるみ。
そのぬいぐるみは無惨な姿となっていた。
片耳は切られ、ワタがお腹から出ており顔はマジックで落書きされていたのだ。
私は慄然とした。
「ねぇ。新しく出来たパフェ行かない?」
「えー。先週もいったじゃん。」
「私も食べたい!!行こうよ!」
楽しげに話している女子3人の声に顔を上げた。
犯人はわかっていた。このぬいぐるみをあげた子はこの中にいて、彼女たちは私を嫌っている。
けれどここまでする必要があるのかと、私はぬいぐるみを抱きしめた。
このままでは彼女たちと帰り道が一緒になってしまう、、
なるべく今は彼女たちとの接触を避けよう。
もう少しさっさと帰れば良かった、
グスッ__
「最後の人は電気を消してね。」
先生の言葉に元気よく彼女たちが返事をする。最後になりそうだと席を立ち上がるとカチッと音がして蛍光灯が全て消えた。
その途端3人の冷ややかな視線が突き刺さる。私の反応を見てさげすように笑うとドアを勢いよく閉めた。
直接向けられた拒絶と悪意に、呆然と立ち尽くす。
_____本当ならあの輪の中に私もいるはず"だった"んだよな。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。