かすかな音が聞こえて目を向けるとそこにはアンティーク調のお店があった。
登りきった時には気が付かなかった。
外壁にはレンガが敷き詰められ、ダークブラウンのドアの端に小さな黒板が飾ってあり白いチョークに
『飲み物ご自由にどうぞ』
と書かれてあった。
どうやらここは喫茶店らしい。
小さい頃からこの街に住んでいたけどこんなところに喫茶店があるとは知りもしなかった。
個人経営なのか、小さなお店に見えるけど店長がどこにも見当たらない
「カラン」
まるで私を迎えてくれたかのようにドアが開いた。
私はびっくりして1歩後ずさった。
しかし私が気づいたのか中にいた人物は私に近づき、幽霊でも見たかのような顔色を青くし目を大きく開いたまま口元をひきつらせた。
斜めで特徴な前髪にうっすら焼けた白い肌、色素薄めの髪質と瞳、クリッとした目は意志の強さを感じる。
私と同じ年齢に見える少年をどこかで見た気がするけど覚えては居ない。
白いシャツに黒いエプロンを着て手にはほうきとちりとりに持っていた。きっとここで働いているのだろう。
?「あんた名前は。」
あなた「え、名前?」
慌てて聞き返した。開口1番に名前を聞かれることなんてそうそうない。
店員であればお店の前に立っていた人に対してまず『いらっしゃいませ』というのが常識だ。
それなのに私の方が失礼なことを言ってるかのように彼は不服そうな表情をしている。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。