第10話

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2021/08/20 03:37
あなた「えっと……はい」


私が小さく頷くとななさんが丸メガネをかけたおじさんに「マスター、彼女に珈琲を1杯」と頼んでくれた。






マスターと呼ばれた丸メガネのおじさんは、優しげな笑みを浮かべて頷くとカップを取りだした。








そんなやり取りの間もずっと鋭い視線が突き刺さるので、おそるおそるこちらを向いてみると、案の定先程の男の子が私のことを睨みつけている。





どうやら彼にとって私は気に入らない存在みたいだ。






ラン「なんだよ、賢二郎!さっきからずっと暑い視線送っちゃって。あなたちゃんに惚れたか?」






賢二郎「はあ!?」





ラン「やだー!ドキドキしちゃう。青春だねぇ。」





どうやら彼の名前は賢二郎というらしく、ランさんにからかわれると眉間に皺を寄せて舌打ちをした。




賢二郎「うるさい、うざい、酒飲み過ぎ
て目ん玉腐ったんじゃない」




ラン「うへー、まじで生意気」








彼は私にだけでなく、他の人にも悪態を着くようだった。ランさんたちが和ませてくれた柔らかな雰囲気で私の中の怒りがしずまり、彼に対して言いたかった文句がずーっと消えていく。






賢二郎「この酔っぱらいが」







ラン「なんだ、このガキ!」








お互い罵り合っていて会話は消して仲良さそうには聞こえないけど、嫌っているようにも見えない。このふたりはこういう会話が通常なのかもしれない。













少しだけ、彼らのような間柄が羨ましい。







私が気づいてきた人間関係は、些細なきっかけで簡単に崩れてしまった。他人とこんな言い合いなんてしたことも無く、いつも心のどこかで周囲の顔を伺っていた。






彼女たちにとって私は、簡単に切り捨ててもいいような、使い捨てみたいな存在だったのだと痛感した。









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