さあ、俺とジョジョの試合になった。ジョジョは俺の参戦に驚いているのか目が点になっている。
フン、その見ているだけで苛立ってくる間抜け面に俺の渾身のパンチを一発食らわしてやる…。
"そうすればあなたにカッコいい姿を見せられるからな"
……確かにそうだな。なんとなくだが俺は心の奥底では「あなたの前で情けない姿は見せたくない」と思っていた。一体何故…?
すると、何やら鈴のような声が横から聞こえてきた。あなただ。
俺がそう言えばあなたはあからさまに驚いて「えーっ!?あのジョジョに勝てるの!?すっごーい!」と子供のような反応をした。
あなたから向けられるその好奇の視線は、浴びていて本当に心地が良かった。他の奴らのそう言ったものには正直無関心なのに。
そんなやりとりをしていると、まだ試合が始まるまで少し時間があるのにあなたが「そしたら後でね!頑張って!」と笑顔で言って走って行ってしまった。
何故こんな中途半端なところで……と思ったがその疑問は思ったより早く解決された。ジョジョを見やすいところで応援するためであった。
あなたはジョジョの元に駆けて行き、「頑張れ!」とでも言うようなポーズをしながら話していた。俺はあそこまで応援して貰えなかったのに。
ジョジョに対して更に嫌な気持ちになっていると、もうすぐ試合が始まると言うので、俺も歩み出す。
見てろよジョジョ、さっきまではあなたの前で負けまいと随分と頑張っていたようだが、それもここまでだぜ。
審判の声と共に試合開始のゴングが鳴る。俺達は互いに一発食らわせてやろうと突進する。狙うはあのジョジョの顔面のみ……
クッ、ここであなたの応援が入るとは。それもジョジョに対して。握りしめた拳に余計に力がこもるのが分かる。
あなたの応援によってやる気を出したジョジョは「うおおおおおっ!」と言いながらパンチを繰り出す構えをしながら突進してきた。
……見える。今ジョジョが俺に向かってどのように攻撃しようとしているのか、手に取るように分かる。
いきなり顔を狙ったって、避けられるに決まってるだろうが!マヌケ!!
そう心の中でジョジョを嘲笑いながら俺はその隙を突くように思いっきりジョジョの腹をぶん殴った。
ただジョジョにダメージを与えられたのならまだ良いが、あなたがジョジョを心配するような声を出すものだからあまり気分は良くない。
しかしまだ試合は終わっちゃあいない。ルールは「相手の顔面に一発でも食らわせれば勝ち」と言うものだ、まだジョジョの顔面に当てていない。
俺はすかさずジョジョの顔面をぶん殴った。その時、これだけでは足りないと小指をジョジョの目に突っ込んでそのまま殴り抜けた。
目から一気に血を出しながらジョジョが吹っ飛んだ。ああ、スッキリした。清々した。
周りの奴らが俺を見て「凄い」と称賛を送る。まあ"あの"ジョジョをやっつけてやったんだからな。そう思っているとあなたがやって来た。
そう言って俺に称賛の言葉を投げ掛けるあなた。この上なく幸せだった。あなたが俺のためにこのように言ってくれている…!
優越感を感じさせるには十分すぎた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。