あなたは次の日病院に行ったらしく、やはり記憶喪失になっていたそうだ。何で俺だけ忘れてるんだ…。圧倒的に不利だ。
こんな予定じゃあなかったのに。本当だったら昨日あなたに告白して今日には付き合っていたのに。不運にも程がある。
俺はなんとかあなたが俺のことを思い出さないだろうか、とそう言った類いの本を一日中読み漁った。
偶々取った本を見てみると、記憶喪失は暫くすれば治ると書いてあった。期間こそバラバラだが。
あなたの記憶はいつ戻るだろう。出来るだけ早く戻って欲しい。一刻も早くこの劣勢から抜け出さなくては、あなたは確実にジョジョを選んでしまう。
第一あのスピードワゴンとか言う男も怪しい。アイツはあなたと随分と仲良しそうだが、あなたに対してどう思っているのだろうか。
あなたもあなたでアイツにとても気を許している。正直ジョジョの前よりも明るく見える。俺にはあんな笑顔見せてくれないのに。
もしかしたら思い出してくれるかもしれない。そんな淡い期待を胸に俺はあなたが入院している病院に行った。
病室のドアを開けると、あなたが目を逸らして「あ、ディオ…。」と小声で言った。つい先月まではニコニコと話してくれたのに。
あなたが初めて会った時のような反応をするものだから、どうしても嫌な気分だった。あからさまに避けられているかのようだった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!