第38話

狂おしい37日目
777
2021/09/13 10:28
あなたは次の日病院に行ったらしく、やはり記憶喪失になっていたそうだ。何で俺だけ忘れてるんだ…。圧倒的に不利だ。



こんな予定じゃあなかったのに。本当だったら昨日あなたに告白して今日には付き合っていたのに。不運にも程がある。



俺はなんとかあなたが俺のことを思い出さないだろうか、とそう言った類いの本を一日中読み漁った。



偶々取った本を見てみると、記憶喪失は暫くすれば治ると書いてあった。期間こそバラバラだが。



あなたの記憶はいつ戻るだろう。出来るだけ早く戻って欲しい。一刻も早くこの劣勢から抜け出さなくては、あなたは確実にジョジョを選んでしまう。



第一あのスピードワゴンとか言う男も怪しい。アイツはあなたと随分と仲良しそうだが、あなたに対してどう思っているのだろうか。



あなたもあなたでアイツにとても気を許している。正直ジョジョの前よりも明るく見える。俺にはあんな笑顔見せてくれないのに。



もしかしたら思い出してくれるかもしれない。そんな淡い期待を胸に俺はあなたが入院している病院に行った。



病室のドアを開けると、あなたが目を逸らして「あ、ディオ…。」と小声で言った。つい先月まではニコニコと話してくれたのに。



あなたが初めて会った時のような反応をするものだから、どうしても嫌な気分だった。あからさまに避けられているかのようだった。
ディオ·ブランドー
………何か、思い出したかい?
(なまえ)·クレア
あなた·クレア
んー……ジョジョのことなら…
ディオ·ブランドー
ジョジョのことじゃあない!!
(なまえ)·クレア
あなた·クレア
ひっ、えっと、ディオのこと…?
思わず怒鳴ってしまった。ただでさえあなたの中の俺は赤の他人なのにこれでは印象が悪くなってしまう。



あなたは俺の目の前で一生懸命考えていた。悶々と考えている姿も本当に可愛い。早く俺のものになれば良いのに。



しかしあなたは俺との記憶を一切思い出さなかった。最初誰かと思ったが、俺が名前を言ったので覚えられたとのことだ。



だが、底無しに優しいあなたは急に微笑んで言った。
(なまえ)·クレア
あなた·クレア
今日は分からなかったけど、頑張ってディオのこと、思い出すから…!
(なまえ)·クレア
あなた·クレア
だから、それまで待ってて欲しい、な…。
そう言いながら困ったように眉を下げたあなた。俺はそれを見た瞬間、みるみる目頭が熱くなっていくのが分かった。



俺は泣いていた。もう何年も泣いていないのに、涙が止まらなかった。あなたにかかっている布団に涙が垂れて染みていく。



急に泣き出した俺を見たあなたは「え、な、泣いちゃった…!?」とパニックになっている。



次の瞬間、あなたは想定外の行動を取った。

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