次の日。俺は非常に眠かった。昨夜家に帰ってから俺はすぐにベッドに入ったのだが、あなたのことが忘れられず一睡も出来なかったのだ。
俺は恐れを感じていた。あなたと出会ってから出てくるようになった"本音"にいつか乗っ取られてしまうような気がした。
まあこのディオはそこまで馬鹿じゃあないからそんなミスはやらかさないが、正直影響はかなり大きく、隅には置けなさそうだ。
取り敢えず起きなければ、と思ったのでベッドから体を起こした。差し込む朝日が眩しい。今日もまた随分と天気が良いようだ。
まあだからと言って何もないがな。
思わず大声を上げて素早く後ろへ下がる。何故だ!?何故ここにあなたがいるんだ!?しかもまだ朝だと言うのに!!
コイツ…いつからいたんだ…。俺に「起きた?」と聞いてきたと言うことは俺がまだ目覚めていない時からいると言うことか…!?
なんと言うことだ…あの馬鹿、何だって俺が目覚めるより前にここにいるんだ。しかもベッドにかなり近かったぞ。
そう戸惑う俺だが"本音"は"朝からあなたに会えて最高だな"と喜んでいる。
何だ、ここに来てから俺は多重人格者のようになっているじゃあないか。別に俺はそんなことは全くないのだが。
"あんな馬鹿女になど興味はない"と思う自分と、"あなたに会えて嬉しい"と思う自分。一体どちらが本当の自分なのかよく分からなくなりつつある。
……フン、迷うまでもない。どう考えても前者だ。あんな馬鹿女、関わりたくない。話していても馬鹿らしさが丸出しのこんな女、話したくもない。
そうだ、俺は馬鹿は嫌いなんだ。そんな奴と関わるなんて無駄無駄。話がすぐ通じなくていちいち面倒臭いからな。
そう言って満面の笑みを見せたあなた。一気に体温が上がる。それと同時に心がドロドロしてきて……いかん!落ち着くんだディオ!
その場で深呼吸して落ち着かせるが、そんな俺を見たあなたが何かあったのかと下から覗き込んできた。
下から覗き込む体勢なので、自然と上目遣いをしているように見える。そんなところを見た俺は余計に体温が上がるのを感じた。
"その綺麗な瞳に映るのが俺だけだったなら"
そんな黒い欲望が一瞬出てきた。あなたの瞳をジッと見つめる。首をかしげるあなたの瞳は吸い込まれるような、輝くアメジストのような紫だった。
目を凝らしてみれば、あなたのその瞳に俺の姿が映った。顔が赤くて、寝起きでまだボサボサの髪の毛をしていた。情けない。
俺は情けないと思う気持ちを払拭するために素早くベッドから下りて、髪の毛を整えた。これでいつも通りになっただろう。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。