あなたの想定外の反応にたじろいだ俺は思わずそっぽを向いた。落ち着かねばならない、あくまであなたにとっての俺は他人だ。
素早く深呼吸して後ろにいるあなたを見やると、今度は顔を赤くしていた。理由が浮かばないので落ち着けた意味が無くなる。
しかし、なんとなく会ったばかりのある日のあなたの行動を思い出した俺はちょいとばかり仕返しをしてやることにした。
そう言ってあなたの額に自分の額をいきなりくっつけた。別に発熱している感じではなさそうだ。あなたは小さく悲鳴を上げて驚いた。
今のあなたは忘れているかもしれないが、これは会ったばかりの時に、あなたの微笑みを見て赤くなっていた俺に対してあなたがした行動だ。
あの時は本当に恥ずかしかったので、漸く仕返しできた。なんだかんだちゃんと覚えてるんだからな、お前からされたことは全部。
そもそもの本人が覚えていない記憶を思い出していたが、やはりあなたの顔は赤かった。そろそろ理由が気になる。
いや、ちょっと心当たりはある。さっきは寝惚けていたが意識が覚醒していくにつれ、俺の顔が目の前にあったことを自覚したのでは?と思う。
その数秒後、あなたの病室に「はぁぁぁぁ!?」と言う俺の悲鳴が響き渡った。コイツなんてことを言うんだ!?
あなたが真っ赤な顔でとんでもないことを抜かしたものだから俺は柄にもなく驚愕するしか出来なかった。
何の関わりも無い男が顔を目の前に近付けてきたらそんなことを言うのか!?お前は今までに他の男にもそんなことを言ったことがあるのか!?
いくらなんでも無防備過ぎやしないか!?と思わずにはいられなかった。相手が俺だったから良かったものの…!
俺はあなたの前で大きくため息をついた。あまりの無防備さに呆れるしかなかった。ここまで俺を戸惑わせたのはお前が最初で最後だな。
互いに顔を真っ赤にしながら言い争っている時間は、ただ幸せだった。
取り敢えず、あなたの記憶が戻ったら本当にキスしてやろうと決意した。覚悟してろよ。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。