いや、まだ間に合うはずだ。そう思った俺は急いであなた達の元へ走った。俺の足音に気付いたあなたが振り返って笑顔になる。
あなたにとって俺はただの友人か何かだろうに、何故ジョジョの前と同じような態度をとるのだろうか、あなたは。
良い意味でも悪い意味でも平等なあなたの行動に内心嬉しくなっていると、ジョジョもこちらを見やる。気付くのが遅いんだよマヌケ。
ジョジョがあなたに声をかけて手を差し出すと、嬉しそうにその手をとるあなた。憎たらしいほどお似合いだった。
エリナはそんな2人を微笑ましそうに見やっている。きっとまだ未練の一つくらいあるだろうに、可哀想な奴だ。まあ俺には関係無いが。
俺だって本当はあなたとそうやって手を繋ぎたい。しかし、今はそんなことが出来る状況では当然ない。
ふとあなたの手を見ると、ジョジョと恋人繋ぎをしていた。それがまた俺の嫉妬心を加速させた。ジョジョの癖に、腹立たしい。
前を歩くジョジョを睨む。お前には本当にうんざりだ。計画のためとは言えお前と表向き仲良くするのにも疲れたし、何よりあなたと常に一緒にいることが憎い。
その時だった。横から「ディオ」と俺の名前を呼ぶ声が。何だと思って見てみれば、エリナだった。
そう鋭い目付きで俺を見ながら言うエリナ。そんなにあからさまだっただろうか。まああなたが好きだから仕方がないところはあると思っているが。
まあ否定する理由もないか、と思ったので俺は認めることにした。
そう守るつもりもない約束を結んだ。フッ、「あなたに手出ししない」か…。とっくに手出しはしたのになァ…?
そう考えて、いつの日かにあなたと過ごした熱い夜を思い出す。想像するだけで口角が上がってきてしまいそうな甘い記憶だ。
あの時の筆舌しがたい快楽を思い出しながら歩いた。2人は笑顔で楽しそうに話しながら、今度のデートはどこに行こうかなんて話していた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!