緑谷の胸ぐらをさらにきつく掴むと、
苦しそうにまた顔を歪めた
私の両親はどちらもヴィランだったから。
ヒーローなんて目指せないわ
諦めたように笑う
片手に持つナイフを勢いよく振り下ろした
最後にみんなの笑った顔が見たかった
下敷きにしていたはずの緑谷が居なくなった
かわされたのかと思った。
直ぐに周囲を見たが緑谷の姿はなかった
見知らぬ女が居て、思わず個性を発動させた
浮いた女が叫ぶ
女の言葉を頭で理解してから
自分の手を見てふと個性をといてしまった
手に血がついてない
ナイフで刺した感触も全然残ってない
私は緑谷を殺していない
殺してない。
クラスの誰一人も殺してない
震える体をちぢこませた
身体はとっくの昔に、
彼らを殺すことを恐怖に思ってたんだ
すすり泣く音だけが聞こえる中、
足音が聞こえてきた
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編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。
登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。