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第22話

忘れられない恋


 宮原くんと付き合い始めたけど、何かが急激に変わることはなかった。

 たぶん、宮原くんが気を遣ってくれているからだと思う。





       【ある日の部活後】


宮原唯月
宮原唯月
ほのみ、ボール片づけたら終わり?
東ほのみ
東ほのみ
うん! って、宮原くんもう着替え終わったの!? ちょっと待ってて!
宮原唯月
宮原唯月
いいよ、俺が片付けとくから着替えて来な
東ほのみ
東ほのみ
え、けどっ
宮原唯月
宮原唯月
いいから。俺が早く一緒に帰りたいの
安藤由香
……二人ってさぁ、もしかして付き合ってる?


 とは言っても、周りから見たらやっぱり少しは変わったようで、安藤さんがそんなことを尋ねてきた。

東ほのみ
東ほのみ
へっ!? ……や、えぇっと
宮原唯月
宮原唯月
よくわかったね、安藤さん
東ほのみ
東ほのみ
ちょっ、宮原くん!?
宮原唯月
宮原唯月
別に隠すことないでしょ?
安藤由香
やっぱりぃー! 前よりもよく一緒にいるし、何より、ゆづちゃんが名前呼ぶようになったからさー!


 そう言いながら、安藤さんはじーっと私の様子を伺っていた。

安藤由香
けどぉ、ほのちゃんは綾崎先生が好きなんだと思ってたー! よく目で追ってたしぃ
東ほのみ
東ほのみ
え、えぇ? そんなことないよっ! 気のせいじゃない?


 うまくごまかせず苦笑していると、



        ぐいっ




 宮原くんの手が肩に回されて抱き寄せられる。

宮原唯月
宮原唯月
ま、そうだったとしても、今は俺のだから。ね、ほのみ?


 爽やかな笑顔を浮かべる宮原くんは、近距離で私の顔を覗き込んできた。

東ほのみ
東ほのみ
ちかいからっ!!! 体育館でっ……何考えてるのっ!!
宮原唯月
宮原唯月
じゃあ、誰も見てないところならいいんだ?
東ほのみ
東ほのみ
な、なな何言ってるの!?


 ニコニコとした笑みは崩れることなく私を追い詰め、羞恥心を煽られたことで思わず宮原くんの鳩尾を殴ってしまう。

東ほのみ
東ほのみ
(ぜっっったい、楽しんでる!!)
宮原唯月
宮原唯月
いったぁ
安藤由香
あははっ、ラブラブだねぇ~! お似合いかもっ
東ほのみ
東ほのみ
あ、安藤さんまでっ! もう、やめてー!


 三人でそんなじゃれ合いをしていると、片付け中に職員室へ行っていた道人くんが帰ってきた。


東ほのみ
東ほのみ
……
綾崎道人
綾崎道人
……


 一瞬、目が合った気がしたけど、道人くんは何も見なかったように視線を逸らして体育館の中央へ歩いていく。

綾崎道人
綾崎道人
ミーティング始めるぞ!


 家の前で会った日以来、話すことは全くなくなり、学校以外で会うことさえもなくなった。

 きっと、お互い避けているからなんだと思う。

東ほのみ
東ほのみ
(もう、このままずっと……道人くんと話せないのかな?)
東ほのみ
東ほのみ
(あ、また道人くんのこと考えてっ……! きっと、今のままが一番良いよね)







 ミーティングも終わり、私は肌寒い冬空の下を宮原くんと一緒に帰っていった。

東ほのみ
東ほのみ
もう明日から冬休みだねー。また部活三昧だけど
宮原唯月
宮原唯月
ま、クリスマスは休みだけどね。ほのみは毎年どうしてるの?
東ほのみ
東ほのみ
え、クリスマスは……
東ほのみ
東ほのみ
(道人くんと一緒にチョコレートケーキを作って……)
東ほのみ
東ほのみ
えっと、……家族と過ごしてるよ! ケーキ食べるくらいだけどねー
宮原唯月
宮原唯月
……ふーん、じゃあ今年は俺とデートしよっか
東ほのみ
東ほのみ
あー、今年ね……で、ででデート!?!?
宮原唯月
宮原唯月
クリスマス、俺のために予定空けてくれる?
東ほのみ
東ほのみ
えっ!? あ、ははははい!! あ、空けとく!!
宮原唯月
宮原唯月
ふふっ。ん、じゃあまた明日、部活でね
東ほのみ
東ほのみ
う、うん! ばいばい!


 宮原くんは私を家の前まで送ると、ひらひらと小さく手を振ってから帰っていった。

東ほのみ
東ほのみ
(プレゼント、どうしよう)


 私は家に入って着替え、無意識にエプロンを付けてキッチンに立っていた。

東ほのみ
東ほのみ
(いつも道人くんとはお互いにケーキを作ったりとか……、けど、宮原くんの家ケーキ屋さんだし食べ飽きてるかな?)
東ほのみ
東ほのみ
(甘さ控えめのお菓子?)


 体が動くままにお菓子作りを始め、黙々と作り続けて出来上がったのは――。

東ほのみ
東ほのみ
なんでチョコレートケーキつくってんの!? これは道人くんと作ってたんだから却下に決まってるじゃん!! はぁ、……もう


 無意識に道人くんのことを考えているあたり、やっぱり私は忘れきれていないんだと再確認してしまう。




      ガチャッ




 頭を抱えていると、玄関が開く音が聞こえた。

綾崎道人
綾崎道人
ほのみー?
東ほのみ
東ほのみ
(え!? なんで道人くんがっ)


 足音がリビングへと向かってきて私はケーキを隠そうとするが、そんな暇もなくドアは開かれた。

綾崎道人
綾崎道人
今日はほのみのお母さん帰れないらしいから、うちにおいで……って


 甘い匂いがしたのか、道人くんはすぐにチョコレートケーキに気付き、キッチンにいる私とばっちり目が合った。

東ほのみ
東ほのみ
え、えっと、これは……
綾崎道人
綾崎道人
……今年のクリスマスは、それを宮原くんに上げるの?
東ほのみ
東ほのみ
い、いや……どうしようか悩んでて
綾崎道人
綾崎道人
……いいと思うよ? ほのみのチョコレートケーキは美味しいからね。宮原くんも気に入るはずだよ


 久しぶりの道人くんの優しい笑顔は、どこか薄っぺらく崩れて見えた。

東ほのみ
東ほのみ
……い、いいの? チョコレートケーキ……、宮原くんにあげちゃって


 私は期待を込めて、けれど恐る恐る、そう聞いてみた。

 しかし、崩れた笑顔は変わらず私に向けられる。


綾崎道人
綾崎道人
ほのみがあげたいものをあげれば、宮原くんにちゃんと気持ちは届くから大丈夫だよ
東ほのみ
東ほのみ
(……ちがう、そういうことを聞いてるわけじゃないのに)
綾崎道人
綾崎道人
じゃあ、先に戻ってるから、一人は危ないから今日はうちにおいでね?


 そう言い残して、道人くんはリビングを出てドアを閉めた。





      ズキンッ  


             ズキンッ




 体が揺れてしまいそうなほどの鼓動が、体中に痛みとして響いていく。


 忘れれば、気にしなければ、もうこんなに苦しい思いをすることはない。

 そう頭でわかっていても、道人くんが私の中から消えてくれることはなかった。

東ほのみ
東ほのみ
なにを……隠してるの? ……道人くん


 頬を伝った涙は、甘いチョコレートケーキに落ちていった。