第14話
鳴り響く恋愛ゴング
夏祭りの日、私は道人くんに何の弁解もせず、あの場から逃げ出した。
なかったことにしたくて、けど、本当になかったことにできると思っていたわけじゃない。ただ、面と向かって話すのが怖かった。
それから私は道人くんを避け続け、宮原くんともちゃんと話さないまま夏休み後半を迎えた。
目の前には、入道雲の浮かぶ空と輝く海が広がり、砂浜を男子バレー部員たちが走っている。
私は安藤さんと一緒にパラソルの下で飲み物の準備をしていた。
もちろん、隣にはみんなの指導をしている道人くんがいる。
楽しみにしていた合宿だけど、泊まり先はお寺。なんでも、もう一人の顧問である先生の実家らしい。
二人から逃げられない窮屈な三泊四日の合宿は、もう憂鬱でしかなかった。
漏れてしまった大きなため息が聞こえたのか、道人くんの方からも視線を感じる。
ランニングから帰ってきた部員たちの中で、一人、宮原くんとだけばっちり目があってしまう。
宮原くんを見ると、夏祭りで言われたことを思い出してしまう。
「ほのみはそのままでも可愛いってば」そう言って、宮原くんは熱を帯びた瞳で私を見つめていた。
後ろから聞こえた声に振り返ると、そこには道人くんではない学校モードの綾崎先生がいた。
名前を呼ぶと道人くんは柔らかく微笑み、私をじっと見つめた。
私が説明をしようとした時、後ろから怒気のこもった宮原くんの声が飛んできた。
宮原くんは一呼吸おくと、堂々と言葉を繋げた。
声を荒げた宮原くんは道人くんに掴みかかり、拳を振り上げた。
凛とした声が響き渡った瞬間、投げられたビキニのブラが宮原くんの顔面に命中した。
梅川先生は着ていたブラを投げたようで、片腕で豊満な胸を隠していた。
駆けつけた男子部員たちに見られているにもかかわらず、梅川先生は何ともない様子で宮原くんの顔に張り付いたビキニをとり、器用に水着を着直す。
道人くんは私を一度見ると、こぶしを握り締めて決心したように砂浜へと歩き始める。
いつの間にか周りの部員たちは、歓声を上げていた。
二人はバチバチと火花が散っているかのように睨み合い、ビーチバレーの準備が始まる。
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