無料ケータイ夢小説ならプリ小説 byGMO

第14話

鳴り響く恋愛ゴング


 夏祭りの日、私は道人くんに何の弁解もせず、あの場から逃げ出した。

 なかったことにしたくて、けど、本当になかったことにできると思っていたわけじゃない。ただ、面と向かって話すのが怖かった。

 それから私は道人くんを避け続け、宮原くんともちゃんと話さないまま夏休み後半を迎えた。




 目の前には、入道雲の浮かぶ空と輝く海が広がり、砂浜を男子バレー部員たちが走っている。

 私は安藤さんと一緒にパラソルの下で飲み物の準備をしていた。

 もちろん、隣にはみんなの指導をしている道人くんがいる。

 楽しみにしていた合宿だけど、泊まり先はお寺。なんでも、もう一人の顧問である先生の実家らしい。

 二人から逃げられない窮屈な三泊四日の合宿は、もう憂鬱でしかなかった。

東ほのみ
東ほのみ
(結局、何も解決しないまま合宿が始まるなんて!! 道人くんも宮原くんもいて気まずすぎるっ!!)
東ほのみ
東ほのみ
はぁああ~っ
安藤由香
ほのちゃーん、大丈夫?
あれ、顔色悪い?


 漏れてしまった大きなため息が聞こえたのか、道人くんの方からも視線を感じる。

東ほのみ
東ほのみ
え、っと、大丈夫、大丈夫!
男子バレー部部長
じゃあ、この辺できゅうけーい! 各自、水分補給はちゃんとしろよ!
安藤由香
あ、みんな戻ってくるね!


 ランニングから帰ってきた部員たちの中で、一人、宮原くんとだけばっちり目があってしまう。

東ほのみ
東ほのみ
あー、次ボール使うよね!
あたし取って来るよ!
安藤由香
それならあたしも行くよぉー?
東ほのみ
東ほのみ
安藤さんは飲み物渡しといて!
あたし一人で平気だから!


 宮原くんを見ると、夏祭りで言われたことを思い出してしまう。

 「ほのみはそのままでも可愛いってば」そう言って、宮原くんは熱を帯びた瞳で私を見つめていた。

東ほのみ
東ほのみ
(宮原くん、なんであんなこと言ったんだろう……。道人くんになんて誤解を解けばいいのかもわからないし……)
東ほのみ
東ほのみ
もうっ!! どうすればいいっての!?
綾崎道人
綾崎道人
悩み事か?
東ほのみ
東ほのみ
わぁっ!? 綾崎先生!
なんでここに?


 後ろから聞こえた声に振り返ると、そこには道人くんではない学校モードの綾崎先生がいた。

綾崎道人
綾崎道人
段差もあるのに、一人でボールかごを持ち上げるのは危ないからな
東ほのみ
東ほのみ
(心配して来てくれたんだ……。
今ここで素直にならなきゃ、
ずっと……)
東ほのみ
東ほのみ
あ、……ありがとうございます!
あと、ごめんなさい
綾崎道人
綾崎道人
……え?
あっ! いや、当たり前のことだろ。東さんは、……大事な部員なんだから
東ほのみ
東ほのみ
(……妹の次は、部員?)
綾崎道人
綾崎道人
ほら、気を付けて持つんだよ
東ほのみ
東ほのみ
(けど、ここで引き下がったら、
ずっと誤解も解けないまま!)
東ほのみ
東ほのみ
あのね! 道人くん!
綾崎道人
綾崎道人
……なぁに?


 名前を呼ぶと道人くんは柔らかく微笑み、私をじっと見つめた。

東ほのみ
東ほのみ
この前の……、お祭りごめんなさい
綾崎道人
綾崎道人
……あぁ、いいんだよ。あんなところ見られたら慌てちゃうよね?
東ほのみ
東ほのみ
そ、そう! あれは、……私もよくわからなくて。けど、本当に宮原くんとは、道人くんが思っているような感じじゃなくてっ!
綾崎道人
綾崎道人
大丈夫、わかってるよ。相談してくれれば、協力するから――
東ほのみ
東ほのみ
……っ! そうじゃなくて!
宮原唯月
宮原唯月
なんであんたはっ!!


 私が説明をしようとした時、後ろから怒気のこもった宮原くんの声が飛んできた。

東ほのみ
東ほのみ
宮原くん!?
宮原唯月
宮原唯月
そうやって安全地帯で、いつまで優しいやつ気取ってる気だよ!?
綾崎道人
綾崎道人
……安全地帯? なんのことか―ー
宮原唯月
宮原唯月
勇気もない癖に嫉妬ばっかして恥ずかしくないの?
綾崎道人
綾崎道人
……っ! 宮原くんに関係ないだろ?


 宮原くんは一呼吸おくと、堂々と言葉を繋げた。

宮原唯月
宮原唯月
関係あるよ。
俺は、ほのみが好きなんだから
東ほのみ
東ほのみ
(……あたしを好き?)
東ほのみ
東ほのみ
えぇええええええ!?
綾崎道人
綾崎道人
――っ!? ……だから、手伝ってるんじゃないか?
宮原唯月
宮原唯月
そうじゃないだろ!? ホント、あんたは何もわかってないな!!


 声を荒げた宮原くんは道人くんに掴みかかり、拳を振り上げた。

東ほのみ
東ほのみ
宮原くんっ!! やめ――
梅川沙良
梅川沙良
待ちなさいっ!


 凛とした声が響き渡った瞬間、投げられたビキニのブラが宮原くんの顔面に命中した。

宮原唯月
宮原唯月
うわっ!? なっ――
東ほのみ
東ほのみ
え!? 梅川先生!? ちょ、ちょっとなんて格好してるんですか!!


 梅川先生は着ていたブラを投げたようで、片腕で豊満な胸を隠していた。

梅川沙良
梅川沙良
合宿って聞いたから遊びに来たのに、いがみ合ってるからよぉ?


 駆けつけた男子部員たちに見られているにもかかわらず、梅川先生は何ともない様子で宮原くんの顔に張り付いたビキニをとり、器用に水着を着直す。

宮原唯月
宮原唯月
んなもん投げないでもらえます!? あんたが入ってくると、またややこしくなるんで黙っててくださいよ!
梅川沙良
梅川沙良
もう~、怖いこと言わないのっ♪ ほのみちゃんも怯えちゃうでしょぉ?
梅川沙良
梅川沙良
どうせ話してたって埒あかないんだからぁ。ビーチバレーで勝った方が、好きなようにすればいいんじゃない? 私ボール持ってきたのよ♪
綾崎道人
綾崎道人
沙良、お前また……
宮原唯月
宮原唯月
……まぁ、埒があかないのは本当ですからね。良いんじゃないですか?
ビーチバレー
綾崎道人
綾崎道人
宮原くんまで! そんなもので決めるようなことじゃっ――
宮原唯月
宮原唯月
本気ですよ。俺が勝ったら、
もう遠慮なんてしませんからね
梅川沙良
梅川沙良
道人もこのへんで決着を付けましょ?
ね? 私もそろそろ煮え切ってほしいのよ♪


 道人くんは私を一度見ると、こぶしを握り締めて決心したように砂浜へと歩き始める。

綾崎道人
綾崎道人
わかった。宮原くん相手でも手は抜かないよ? いいね
宮原唯月
宮原唯月
もちろん。そうしてもらわないとすぐゲームセットしちゃいますからね?


 いつの間にか周りの部員たちは、歓声を上げていた。

 二人はバチバチと火花が散っているかのように睨み合い、ビーチバレーの準備が始まる。



東ほのみ
東ほのみ
(ま、まってよ。
あたしの気持ちは!?
話はいつ聞いてくれるのっ!!)