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第5話

イケメン先生と二人だけの甘い時間


 学校では私情を挟まないようにしている道人くんが、ごめん、と切なげな声で私に言った。

 なにが道人くんをそんな風にしたのか、なにに対しての謝罪なのか、わからない事が多すぎて家で様子を見ようと思った。




 いや、思っていた……が。




   コンッ
      コンッ



綾崎道人
綾崎道人
ほのみー! 鈴屋のマドレーヌ買ってきたよ。ほのみが見たがってた映画も借りてきたから、見ながら一緒に食べよう
東ほのみ
東ほのみ
(なんでいつも通りなの!?)


 道人くんは穏やかな笑みを浮かべ、いつものように私の部屋に入ってきた。

 Vネックの白いインナーの上から淡い浅葱色のカーディガンを羽織り、黒のスキニーで引き締めたカジュアルな恰好の道人くん。

東ほのみ
東ほのみ
(あぁ、今日の私服もかっこいい! なに着てもかっこいいなんてズルいよ!)
東ほのみ
東ほのみ
だから、勝手に入って来ないでよ!


 クッションを投げつけるが、道人くんは軽々とそれをキャッチして私に手渡しで返してくれる。

綾崎道人
綾崎道人
ははは、ごめん。早くほのみの顔を見たかったんだ
東ほのみ
東ほのみ
なっ!? もう! 映画セットするから、お茶入れてきて!!


 私は受け取ったクッションで道人くんを思い切りたたくが、彼はそれさえも受け止めてしまう。




    ドキッ

         ドキッ




綾崎道人
綾崎道人
ははっ、うん、ちょっと待ってて


 私の気も知らず、彼は嬉しそうに部屋出ていった。

 様子がおかしいままならどうしたのか聞こうと思っていたが、そんなこと気にさせないような雰囲気。

 優しい眼差し、柔らかな仕草、愛おしそうな微笑み。安心してしまうほど、いつも通りの道人くんだった。

東ほのみ
東ほのみ
(わざとなのか素なのかもわからないなんて、あたしホントに道人くんのことわかってないんだなー)


 映画をセットし終えて小さな丸テーブルを広げていると、ノックと共にドアが開く。

綾崎道人
綾崎道人
あ、テーブルありがとう
東ほのみ
東ほのみ
別に、時間余ったから用意しただけだし
綾崎道人
綾崎道人
うん。じゃあ、見ようか。はい、今日はほのみが好きなラベンダーティーだよ


 道人くんはベッドを背にして私の隣に座り、ティーカップを渡してくれる。


 このラベンダーティーは、道人くんが私のためにラベンダーを庭で育て、それを乾燥させて淹れているものだ。

 私が天邪鬼で悩み荒れていた頃、「落ち着くよ」と言って初めて飲ませてくれたのがこのお茶だった。

 気遣ってくれた道人くんの気持ちが嬉しくて、「道人くんのラベンダーティー、美味しい」と呟いたら、それから庭でラベンダーを育てはじめていた。

東ほのみ
東ほのみ
(まさか、今日淹れてくれるとは思わなかったなー)
東ほのみ
東ほのみ
(そっか、今は、今だけは、私が道人くんを独り占めできる時間なんだ)


 彼は私と同じようにティーカップに口を付けると、リモコンの再生ボタンを押した。

 学校とは違い、部屋には私と道人くんだけ。

 ぎりぎり触れない数センチの距離。

東ほのみ
東ほのみ
(あれ? けど、いつもはあたしが悩んでたり落ち込んでる時に淹れてくれるよね?)
東ほのみ
東ほのみ
(やっぱり、なにかいつもと違う気がするけど、……全然わかんないや)
東ほのみ
東ほのみ
(なんでこんなに近くにいるのに、距離を感じるんだろう)


 気付かれないように道人くんを盗み見るが、集中して映画を見ている横顔さえかっこよく、私はすぐに視線をテレビに戻した。

綾崎道人
綾崎道人
ほのみ、どうかした?
東ほのみ
東ほのみ
な、なにが? 映画見てるんだけど
綾崎道人
綾崎道人
そう? 少し見られてる気がしたけど、気のせいかな?
東ほのみ
東ほのみ
じ、自意識過剰! 映画、見ないなら止めちゃうよ!
東ほのみ
東ほのみ
(いやぁー! 気付かれてたぁー!)
綾崎道人
綾崎道人
いいよ


 道人くんは少し低めの声でそう言い、片手を私の肩に回してリモコンの一時停止ボタンを押した。

東ほのみ
東ほのみ
えっ!?
東ほのみ
東ほのみ
(肩!! 肩のこの手なに!?)
綾崎道人
綾崎道人
少しほのみに聞きたいことがあったんだ
東ほのみ
東ほのみ
なななに? 手短にしてよ、映画の続き気になってるんだから!
東ほのみ
東ほのみ
(いつもと雰囲気違うじゃん!!
なんかイケメンオーラ染み出てるし! 見られてるの恥ずかしすぎるっ!)
綾崎道人
綾崎道人
ほのみは……


 穴が開いてしまいそうなほど横から視線を感じ、私は俯いて道人くんの声に耳を澄ませる。

綾崎道人
綾崎道人
宮原くんのこと好きなの?
東ほのみ
東ほのみ
へっ?


 予想もしなかった質問に間抜けな声が漏れ、道人くんを見ると憂いを帯びた横顔がそこにはあった。

綾崎道人
綾崎道人
いや、ほのみが男の子とあんなに楽しそうに話してるの初めて見たから、……もしかしてってね
綾崎道人
綾崎道人
そうだとしたら、今日邪魔したと思ってさ
東ほのみ
東ほのみ
(だからあの時、謝ってたの?)
東ほのみ
東ほのみ
ち、違う! 全然好きじゃないよ!!
むしろ嫌い!!
東ほのみ
東ほのみ
(あれ? あたしなんでこんな必死にしてるんだろう)
綾崎道人
綾崎道人
嫌い? 楽しそうに話してなかった?
東ほのみ
東ほのみ
あれは……
東ほのみ
東ほのみ
(道人くんの話をしてたなんて言えない!)
東ほのみ
東ほのみ
……み、宮原くんの家、鈴屋なんだって!
綾崎道人
綾崎道人
この、マドレーヌ作ってる鈴屋?


 道人くんはテーブルに置かれたマドレーヌを一つ取り、首を傾げて私を見た。

東ほのみ
東ほのみ
そう! この前マドレーヌラスクもらって、その話してたの!


 真実を織り交ぜたうまい嘘をつき、私は勢いに乗って話した。

 手に持っているマドレーヌを見つめ、道人くんは安心したように微笑み……。

綾崎道人
綾崎道人
そっか……。はい、ほのみ。あーん
東ほのみ
東ほのみ
はっ!?


 道人くんはそのマドレーヌを私の唇に当てた。

綾崎道人
綾崎道人
まだ一つも食べてないでしょ? はい、口開けて
東ほのみ
東ほのみ
自分で食べれるから!
綾崎道人
綾崎道人
じゃあ、これ俺が食べていいの?
ほのみの唇に触れたけど
東ほのみ
東ほのみ
~~っ!? あたしが食べる!!


 自分の口に運ぼうとする道人くんの手首を掴んで止めると、彼はまた私の口元にマドレーヌを寄せた。

綾崎道人
綾崎道人
ふふ、どーぞ


 ご満悦な笑みを浮かべる道人くんを睨み、彼の指に触れないようマドレーヌを口に含んだ。




  ド            ド
   キ   ド        キ
        キ    ド
     ド        キ
      キ   ド      ド
  ド        キ      キ
   キ



東ほのみ
東ほのみ
(肩に手を回されながら、あーんされて……、心拍数上がり過ぎて死ぬ!)
綾崎道人
綾崎道人
映画止めてごめんね。続き見ようか
東ほのみ
東ほのみ
その前に! この手、暑いからさっさと離して!
綾崎道人
綾崎道人
暑い? エアコン付けようか
東ほのみ
東ほのみ
付けなくていいから離してよ! 道人くんの車にマドレーヌ叩きつけていいの!?
綾崎道人
綾崎道人
はははっ、わかったよ。本当、ほのみは可愛いなぁ
東ほのみ
東ほのみ
~~っ!!? もう再生するからね!


 それから、道人くんは部屋に入ってきた時より明るい笑顔を浮かべて映画を見ていた。











      『数日後』









 今日は初めての委員会の集まりがある。

 けど、宮原くんを……す、好きだと勘違いされた日から、私は話しかけることに少し戸惑いを感じていた。

東ほのみ
東ほのみ
(けど、弱みは握られてるし、同じ委員会に同じ部活……避けられないよねー)
東ほのみ
東ほのみ
(しかも今日に限って宮原くん午後からずっとサボってるし、声かけに行かなきゃ委員会こないだろうな)


 宮原くんが屋上にいるだろうと目星を付け階段を上っていく途中、たくさんの本を持った梅川先生と男子生徒を見かけた。

男子生徒1
先生、それ持つよ
梅川沙良
梅川沙良
ホントー? ありがとうね。図書室までお願いしてもいい?


 女性らしい見た目に、私には絶対真似できない甘え上手なセリフと態度。

 私が梅川先生のようになれたら、学校でも普通に道人くんと話せるんだろう。

 卑屈になってしまう気持ちをおさえ、それ以上見ないように階段を駆け上ろうとした時――。

梅川沙良
梅川沙良
あ! あなた、ほのみちゃんよね?
東ほのみ
東ほのみ
え!? はい、東ほのみです、けど
東ほのみ
東ほのみ
(あれ? 初対面……だよね?)
梅川沙良
梅川沙良
あら、道人から私のこと聞いてない?
梅川沙良
梅川沙良
私はいつも道人と一緒にいる時にあなたの話を聞いてるわ。幼馴染のほのみちゃん♪
東ほのみ
東ほのみ
(いつも、道人と、
一緒にいる時ぃ?)
梅川沙良
梅川沙良
かわいいかわいいってホントうるさいんだからぁ
梅川沙良
梅川沙良
もう妹を通り越して、子供みたいな溺愛ぶりだって、道人ったら自分で言っててね~
東ほのみ
東ほのみ
(……妹を通り越して、……子供って)
東ほのみ
東ほのみ
わ、私これから委員会で!!
もう一人の子を呼びに行くとこなんで失礼します!


 私は声を上げることで、道人くんを呼び捨てにするこの人へのドス黒い感情と、今にも溢れだしてしまいそうな涙を押し殺した。

梅川沙良
梅川沙良
あ、ほのみちゃん図書委員でしょ? 私、図書委員担当なの!
また、あとでね♪
東ほのみ
東ほのみ
は、はい、……また!


 息切れしてしまう勢いで階段を駆け上り、屋上の扉を力任せに開ける。





     バ
      タ
       ン
        ッ



宮原唯月
宮原唯月
ん~


 丁度いい日当たりの屋上で、眼鏡を外している宮原くんが本を片手に眠っていた。

東ほのみ
東ほのみ
(気持ちよさそうに寝ちゃって……、宮原くんを呼びに来なかったらあんなこと知らずに済んだのに)
東ほのみ
東ほのみ
宮原くん!! 委員会だよ!
宮原唯月
宮原唯月
んー


 傍らに座り込み、肩を揺らして声をかけても彼はまだ起きそうにない。

 私は梅川先生の言葉を思い出して俯き、瞳からは涙が零れた。

東ほのみ
東ほのみ
(道人くんと梅川先生の関係って何なの、……子供って、もう意味分かんないっ!)
宮原唯月
宮原唯月
ふわぁ~。……ん?
どうしたの東さん
東ほのみ
東ほのみ
……やっと起きた?
ほら、委員会行くよ
宮原唯月
宮原唯月
その泣き顔で行くつもり?


 宮原くんは私の頬を伝った涙を親指で拭い取り、手を添えた。









      カシャッ









 スマホで写真を撮るような電子音が後ろから聞こえ、咄嗟に振り返るが塔屋の扉はしまっており、そこには誰もいない。

宮原唯月
宮原唯月
次は何?
東ほのみ
東ほのみ
今、なんか音しなかった?
宮原唯月
宮原唯月
音? ふわぁ~。んー、わかんない
東ほのみ
東ほのみ
(あれ? 気のせい?)
宮原唯月
宮原唯月
それより、もう大丈夫なわけ?
東ほのみ
東ほのみ
……う、うん。ごめん
宮原唯月
宮原唯月
じゃあ、行くよ



 宮原くんは眼鏡をかけて気だるげに起き上がり、私たちは屋上を出て委員会へ向かった。



梅川沙良
梅川沙良
ふふっ、屋上で二人きり、顔に手を伸ばしてキスする直前みたい♪ 道人に送っちゃお~




 このとき、私は今以上に道人くんとの距離が遠のくだなんて思ってもみなかった……。