第24話
好きな気持ちに天邪鬼にはなれない
道人くんから、居酒屋の前で撮った梅川先生とのツーショットが届いた。
宮原くんは私のスマホをのぞき込んでくると、画面をいじって写真は閉じられてしまう。
画面をもう一度見てみると、そこには「早く来ないと、お持ち帰りしちゃうわよ♪」という梅川先生らしいメッセージがあった。
道人くんは梅川先生と付き合ってて、私は宮原くんと付き合ってる。
お持ち帰りされるなんて、なにもおかしいことじゃない。恋人同士なら普通。
おかしいのは、……私がまだ道人くんを好きなことなんだから。
これ以上宮原くんを傷つけたくない。
けど、私は宮原くんの目を真っすぐ見ることができなかった。
宮原くんも私の目を見ることなく手を繋ぎ、少し速足で歩き始める。
手は少し汗ばみ、私は焦りを隠せなくなっていた。
今、この手を振り払って道人くんのとこに行ったら何か変わる?
けど、そんなことをしたら宮原くんにどんな思いをさせるだろう。
考えは何もまとまらなくて、ただ、宮原くんについていくことしかできなかった。
顔をあげると、そこは写真でみた飲み屋街だった。
そういった瞬間、繋いでいた手が引っ張られて痛いくらい強く抱きしめられた。
耳元でささやかれた声は小さく震えていた。
腕が緩められ、私は宮原くんから離れた。
宮原くんに背を向け、私は写真のお店に向かった。
角を曲がると、店先の椅子に座っている道人くんと梅川先生がいた。
梅川先生は私に気付き、ぐっすりと眠っている道人くんが倒れてしまうのも構わずに立ち上がる。
そう言うと梅川先生は店の前を通ったタクシーを止めた。しかし、乗ろうとせず私を見てくる。
扉はバタンッと梅川先生に閉められ、タクシーは走り出した。
道人くんは頭を押さえながら唸ると、私の肩に倒れかかってきた。
タクシーに乗っている間、道人くんは私の肩に頭を乗せて少し眠っていた。
家につくとデートに行った両親がまだ帰ってきていなかったため、私の家で話をすることになった。
二人でリビングのソファに座ったけど、私と道人くんの間には微妙な距離がある。
道人くんは背もたれに頭を預け、額に手を当てて考えているようだ。
私の頬に優しく触れる道人くんの手から、見つめてくる瞳から、私を包み込んでくれるような愛情が伝わってくる。
道人くんは嬉しそうに私をぎゅーっと抱きしめると、そのまま唇をよせて――。
ドンッ
私は道人くんを押し退けて立ち上がった。
急に聞こえてきたお母さん達の声で我にかえり、道人くんとキスをしようとしていたことに恥ずかしさを隠せない。
道人くんはソファに倒れ込みながらクスクスとおかしそうに笑っていた。
両想いになっても、まだまだ私に問題はありそうだけど……。
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