第16話
肝試しと二人だけの時間
ふわふわの雲の上で、優しく吹き通るそよ風が心地いい。
周りには誰もいないのに、ふにっとした柔らかいものが頬に触れた気がした。
そっと目を開けると、私は額に濡れタオルをのせて、和室の中央に敷かれた布団に寝転んでいた。
その傍らには、私をうちわで扇いでくれている道人くんがいる。
道人くんは庭で草むしりをする部員たちを見ていたが、私の声を聞いてすぐに微笑みかけてくれる。
そう、聞こうとした時、ふすまが開いて洗面器を持った梅川先生が入ってきた。
梅川先生は私に軽く頭を下げて謝ってくれた。
私が元気よく返事をすると、梅川先生はにんまりと微笑む。
【合宿2日目・夜】
部長に呼ばれて駆け寄ると、ポンッと押されて宮原くんの前に立たされた。
断れないでいると、道人くんは私の手を握って宮原くんから引き離し、自分の隣へと立たせた。
そう言うと、道人くんは私の肩に手を回して抱き寄せた。
ドキッ
道人くんは説得してくる梅川先生を置いて、私の手を取り歩き始めた。
道人くんは、繋いでいる私の手の甲にキスをした。
私たちは墓地裏の山道を、手を繋いだまま上っていった。
森の中からは変な物音が聞えてきたり、後ろを振り返れば墓地が広がっていたりと、本当にお化けが出て来そうな雰囲気がある。
道人くんは私の顔を覗き込むと、繋いでいた手を一度離し、指を絡めて恋人繋ぎに変える。
ドキッ
道人くんはそういうと、私の頭を撫でてくれた。
避け続けていたのは私だけど、久しぶりに道人くんに頭を撫でてもらえたのが嬉しくて、顔が自然と綻んでしまいそう。
今なら、素直に言えるかもしれない。
そう言いかけた時、木陰からガサガサと音がきこえ……。
中から狼の被り物をした部員が、急に顔を出してきた。
心底驚いた私は、思わず道人くんに抱き着いてしまう。
私が道人くんを盾にするようにして背中に隠れながら進んでいくと。
ヌルゥ
木の上から何かが肩に落ちてきて、私はまた道人くんの背中に抱き着いていた。
説得力の欠片もない悲鳴を上げながら道人くんから離れようとしたが、彼は急に振り返って私を抱きしめた。
私は咄嗟に鳩尾を拳で殴って、道人くんから離れる。
肝試しは怖いけど、久しぶりの道人くんとのじゃれ合いは私もとっても楽しくて、こんな時間が大切だったんだと気づけた。
溺愛されて天邪鬼になっても、それを笑って受け止めて、ふざけ合って、道人くんと笑い合えるこんな時間が私は好きだったんだ。
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