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第16話

肝試しと二人だけの時間


 ふわふわの雲の上で、優しく吹き通るそよ風が心地いい。

 周りには誰もいないのに、ふにっとした柔らかいものが頬に触れた気がした。

綾崎道人
綾崎道人
俺が告白なんてしたら、ほのみはもっと困ってたかな? 本当、今更後悔するなんてかっこ悪いね
東ほのみ
東ほのみ
(道人くんの声? 道人くんが私に告白なんて……、そっか、これ夢だ)


 そっと目を開けると、私は額に濡れタオルをのせて、和室の中央に敷かれた布団に寝転んでいた。

 その傍らには、私をうちわで扇いでくれている道人くんがいる。

東ほのみ
東ほのみ
みち、と……くん?


 道人くんは庭で草むしりをする部員たちを見ていたが、私の声を聞いてすぐに微笑みかけてくれる。

綾崎道人
綾崎道人
ほのみ。よかった、目が覚めたんだね
東ほのみ
東ほのみ
……道人くん、今さっき


 そう、聞こうとした時、ふすまが開いて洗面器を持った梅川先生が入ってきた。

梅川沙良
梅川沙良
代えの水持ってきたわよーって、あら、起きたのね? もう、ほのみちゃんったら急に倒れて、私の胸にうもれちゃうんだから、驚いたわぁ
東ほのみ
東ほのみ
え……、えぇ!? あ、そういえば私海でっ、ごめんなさい!
東ほのみ
東ほのみ
(あの柔らかい感触、梅川先生だったの!? ……すごい)
綾崎道人
綾崎道人
寝ている間に病院で診てもらったけど、疲労と軽い熱中症らしい。無理をさせてごめんね、ほのみ
東ほのみ
東ほのみ
え、そんな、道人くんのせいじゃないから! 自分の体調管理もできないなんてマネージャー失格だね、あははー
梅川沙良
梅川沙良
本当よ! ……まぁ、けど、私が責め過ぎたのも原因よね。ごめんなさい


 梅川先生は私に軽く頭を下げて謝ってくれた。

東ほのみ
東ほのみ
えぇ!? そんな、梅川先生まで。私もう元気ですから! 二人のせいじゃないし、気にしないでください!
東ほのみ
東ほのみ
(梅川先生が謝ってくれるなんて! 少し誤解してたかも。けど、最初からそんな悪い人じゃなかったよね)
梅川沙良
梅川沙良
本当に?
東ほのみ
東ほのみ
はい!


 私が元気よく返事をすると、梅川先生はにんまりと微笑む。

綾崎道人
綾崎道人
沙良、……まさか
梅川沙良
梅川沙良
じゃあ、ほのみちゃん、明日肝試しに行きましょう!
東ほのみ
東ほのみ
……へっ?




       【合宿2日目・夜】



男子バレー部部長
じゃあ、これからバレー部合宿恒例の肝試しをはじめまーす
男子バレー部部長
お化け役は交代制で、二人一組でまわってもらうから。墓地の裏手の山道を通って、バケツ一杯に井戸の水を入れて帰ってくること! 筋トレ込みの肝試しだから、驚いてもバケツは置いてくるなよ!
部員たち
はーい
男子バレー部部長
東さーん?
東ほのみ
東ほのみ
あ、はい!


 部長に呼ばれて駆け寄ると、ポンッと押されて宮原くんの前に立たされた。

男子バレー部部長
ペアは宮原でいいよね?
東ほのみ
東ほのみ
……っえ?
男子バレー部部長
宮原もいいよな?
宮原唯月
宮原唯月
俺は、いいですけど
東ほのみ
東ほのみ
(先輩たち、絶対何か企んでるよー。めちゃくちゃニヤニヤしてんじゃん!)


 断れないでいると、道人くんは私の手を握って宮原くんから引き離し、自分の隣へと立たせた。

綾崎道人
綾崎道人
はい、ストップ! 仮にも東さんは病み上がりなんだから、今日は安全をとって俺とペアな


そう言うと、道人くんは私の肩に手を回して抱き寄せた。




        ドキッ



東ほのみ
東ほのみ
(近いぃー!!! 人前でなにやってんの道人くーんっ!!!?)
男子バレー部部長
けど! うーん、まぁ、……たしかに何かあってからじゃ遅いし。じゃあ先生、東さんのことよろしく
梅川沙良
梅川沙良
ちょっと! 道人、私とはぁー?
綾崎道人
綾崎道人
梅川先生、今日は我慢してください
梅川沙良
梅川沙良
ほのみちゃん誘ってせっかく道人も来てくれたのに、これじゃ意味ないじゃない!
東ほのみ
東ほのみ
(え? 
私が来たから、道人くんも……?)


 道人くんは説得してくる梅川先生を置いて、私の手を取り歩き始めた。

綾崎道人
綾崎道人
はぁ、いこっか。ほのみ
東ほのみ
東ほのみ
あ、道人くん。……けど
綾崎道人
綾崎道人
沙良はああなったら我儘通そうとするから、放っておこう。
それに……


 道人くんは、繋いでいる私の手の甲にキスをした。

東ほのみ
東ほのみ
っ――!
綾崎道人
綾崎道人
ほのみとこうやって二人で話せる時間は久しぶりだから、俺も譲れないしね








 私たちは墓地裏の山道を、手を繋いだまま上っていった。

 森の中からは変な物音が聞えてきたり、後ろを振り返れば墓地が広がっていたりと、本当にお化けが出て来そうな雰囲気がある。

東ほのみ
東ほのみ
き、肝試しって、意外とっ!?
こ、怖くないね!!
綾崎道人
綾崎道人
ははっ、本当に?


 道人くんは私の顔を覗き込むと、繋いでいた手を一度離し、指を絡めて恋人繋ぎに変える。




     ドキッ



東ほのみ
東ほのみ
(手っ!!!! ドキドキしすぎて、手汗かいちゃうよぉーーー!!)
綾崎道人
綾崎道人
ほのみと肝試しに来たかったのは、他にも理由があるんだけどね
東ほのみ
東ほのみ
えぇっ!? そそそそうなんだっ?
綾崎道人
綾崎道人
あははっ、怖い?
これじゃ、昨日の続きは聞けないかな?
東ほのみ
東ほのみ
(そっか! 昨日、聞いてくれるって言ってたから)
東ほのみ
東ほのみ
聞いてほしいっ! あ、あれはね! いつも私と宮原くんのこと応援してくれようとするけど、本当に宮原くんのことは好きじゃなくて、……宮原くんとは友達でいたかったんだけど
綾崎道人
綾崎道人
……そっか、ごめんね。俺の勘違いで何度も、辛かったでしょ?
東ほのみ
東ほのみ
それくらいで
辛くなんてないよ!!
大丈夫!
綾崎道人
綾崎道人
ははっ。けど、ほのみは我慢しちゃうからなぁ


 道人くんはそういうと、私の頭を撫でてくれた。

 避け続けていたのは私だけど、久しぶりに道人くんに頭を撫でてもらえたのが嬉しくて、顔が自然と綻んでしまいそう。





 今なら、素直に言えるかもしれない。

東ほのみ
東ほのみ
あのね! 私、道人くんのことが――!


 そう言いかけた時、木陰からガサガサと音がきこえ……。

お化け部員
がおぉーっ!!!
東ほのみ
東ほのみ
ひゃぁああああああああ!!?


 中から狼の被り物をした部員が、急に顔を出してきた。

 心底驚いた私は、思わず道人くんに抱き着いてしまう。

東ほのみ
東ほのみ
(あ、道人くんの香り……
落ち着く……って!!?)
東ほのみ
東ほのみ
わああぁっ!? ご、ごごめん!!
綾崎道人
綾崎道人
ははは、大丈夫。
くっついていてもいいよ?(小声)
東ほのみ
東ほのみ
ひ、人もいるのにっ!!
バカなこと言わないでっ!(小声)
お化け部員
あー、東さんと先生か。
転んでない? 大丈夫?
東ほのみ
東ほのみ
だ、大丈夫!
ほら、先生早くいきましょ!









 私が道人くんを盾にするようにして背中に隠れながら進んでいくと。




       ヌルゥ



東ほのみ
東ほのみ
ぎゃぁあああああっ!?


 木の上から何かが肩に落ちてきて、私はまた道人くんの背中に抱き着いていた。

東ほのみ
東ほのみ
あああ!! もうっ!! 怖くないぃーー!!


 説得力の欠片もない悲鳴を上げながら道人くんから離れようとしたが、彼は急に振り返って私を抱きしめた。

東ほのみ
東ほのみ
なぁあああ!!? 何すんのっ!!


 私は咄嗟に鳩尾を拳で殴って、道人くんから離れる。

綾崎道人
綾崎道人
うっ、いったぁー。ははっ
東ほのみ
東ほのみ
な、なんで笑ってんの!? 道人くんどっかおかしくなった!?
綾崎道人
綾崎道人
あ、いや、ごめんね。こんな風にほのみと話せるの久しぶりだと思ってさ? ついからかいたくなっちゃったんだ
東ほのみ
東ほのみ
そ、それは……ごめんなさい。だって、変なところ見られた上に勘違いされてるから、……話しづらくなっちゃって
綾崎道人
綾崎道人
うん、今度からはもっとほのみの話聞かないとね? ね、もう一回ぎゅーってしちゃだめかな?
東ほのみ
東ほのみ
ダメに決まって――!
お化け部員
うおぉおおおおおおお!
東ほのみ
東ほのみ
おぉおおおおお!?!?
綾崎道人
綾崎道人
あっはは! 危ない、倒れちゃうよ、ほのみ


 肝試しは怖いけど、久しぶりの道人くんとのじゃれ合いは私もとっても楽しくて、こんな時間が大切だったんだと気づけた。

 溺愛されて天邪鬼になっても、それを笑って受け止めて、ふざけ合って、道人くんと笑い合えるこんな時間が私は好きだったんだ。