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第6話

イケメン先生の焦燥



ピロン


綾崎道人
綾崎道人
(ん? 沙良から写真付きのメール……、また自撮りかなにかか?)
綾崎道人
綾崎道人
(はぁ、学校内であいつは――……)
綾崎道人
綾崎道人
……この後ろ姿、ほのみ?


















 私が教室へ向かっていると、廊下でスマホを見ている道人くんがいた。


 「もう妹を通り越して、子供みたいな溺愛ぶりだって、道人ったら自分で言っててね~」、そう言った梅川先生の声が頭の中で再生される。


 胸に大きな穴を空けられたような感覚。

 虚無感と悲しみでいっぱいになる。

東ほのみ
東ほのみ
(でも、なんでこんな気持ちになってるんだろう……。私は、……道人くんのことをどんな風に思ってる?)


 今、普通に道人くんに話しかけることなんてできない。

 けど、彼を見れただけで胸は高鳴り、嬉しくて切なくて……、それだけで少し幸せだなんて思ってしまう。




       ドキ


              ドキ




 ぐるぐると考えながら道人くんを見ていると、ふと、その視線が重なった気がした。


 けど、その瞬間、彼の瞳は揺れ、眉間にしわを寄せて目を逸らされてしまう。



 私の足は自然と止まり、道人くんの離れていく姿が脳裏に焼き付けられる。



宮原唯月
宮原唯月
なにしてんの?
早くしないと委員会始まるよ
東ほのみ
東ほのみ
……あっ! ごめん、今行く!



 教室に着くとすぐに委員会が始まった。


 壁際で話し合いを見ている梅川先生と目が合い、彼女は笑顔で私に手を振る。

 しかし、彼女に対しての印象は最悪で、それでも変に敵意をむき出しにするのも良くないと、私は笑って会釈した。

宮原唯月
宮原唯月
顔引きつってるよ
東ほのみ
東ほのみ
え! 笑えてない?
宮原唯月
宮原唯月
うん、不細工だった
東ほのみ
東ほのみ
ぶさっ!? どうせ不細工ですー!
宮原唯月
宮原唯月
別に顔は可愛いけど、無理に笑うからだよ
東ほのみ
東ほのみ
は、はぁ!?


 思いがけない「可愛い」という言葉を聞いて、私は隣に座る宮原くんに肘打ちをした。

 机に肘をついてボーっと黒板を見ていた宮原くんの脇腹に、それは見事クリーンヒット。

宮原唯月
宮原唯月
イタッ!


 彼は脇腹をおさえて苦笑しながら、眼鏡の隙間から私を睨む。

東ほのみ
東ほのみ
一言多いからだよ!
宮原唯月
宮原唯月
へぇ~? 一言ってどっちのことだか
東ほのみ
東ほのみ
~~っ!! もういいでしょ!
宮原くんも話し合いちゃんと聞いててよね!
宮原唯月
宮原唯月
ふっ、はいはい


 宮原くんは私を見て笑みを漏らすと、前に視線を戻して話し合いに耳を傾けた。

 横から見ると眼鏡でいつも見えない瞳が覗ける。

 だるそうに肘をついている腕とは対照的に、瞳は真剣に黒板を見ていた。





    ドキッ




東ほのみ
東ほのみ
(宮原くんって色々ギャップありすぎるんだよね……。たまにかっこよく見えるの、なんか悔しい)


 気持ちを紛らわすため話に集中すると、時間はあっという間に過ぎた。

図書委員長
じゃあ、昼休みの当番はこんな感じで。夏休みも委員会活動はあるので、次の委員会で話し合いましょう。今日はこれで図書委員会を終わります。
お疲れ様でした
宮原唯月
宮原唯月
そういえばもうすぐ……


 宮原くんは少し眉間にしわを寄せ嫌そうに立ち上がった。

東ほのみ
東ほのみ
なにかあるの?
宮原唯月
宮原唯月
中間試験。……だるいなぁ
東ほのみ
東ほのみ
え!? もう!?
宮原唯月
宮原唯月
来週から準備期間でしょ。
……なに真っ青になっちゃって
東ほのみ
東ほのみ
私、高校の数学ついていけてない!
わー、試験どうしよう!
宮原唯月
宮原唯月
なんだ、数学ならそれこそ綾崎先生に相談すれば?
東ほのみ
東ほのみ
うーん、……けど
東ほのみ
東ほのみ
(さっき、私を見て道人くん嫌そうにしてた……よね?)
宮原唯月
宮原唯月
今ならちょうど職員室出るくらいの時間でしょ。いってら
東ほのみ
東ほのみ
え、今から!? ちょっと、むりむり!!



 ポンッと背中を押されるが、私は振り返って抵抗をした。

宮原唯月
宮原唯月
何言ってんの? 話しかけられる上に個別で教えてもらえる。一石二鳥のチャンスじゃん
東ほのみ
東ほのみ
だ、だから!
何喋ればいいかっ……!
宮原唯月
宮原唯月
質問すればいいだけだよ。
……むしろ何想像してんの?
東ほのみ
東ほのみ
~~っ!? もう!
行ってきます!!
宮原唯月
宮原唯月
はいはい、がんばれー


 うまいこと宮原くんにのせられた私は、勢いで道人くんのいる教員室まで向かった。

東ほのみ
東ほのみ
(宮原くんって優しくはないけど、
あたしが道人くんと話せるようにさり気なく背中押してくれるよね……。
今度お礼しようかな?)
東ほのみ
東ほのみ
(ていうか! 私、道人くんになんて言えばいいの!? 数学わからないところがあるんですけど?)
東ほのみ
東ほのみ
(どうしよう……。さっきみたいな道人くんに、……うまく話しかけられるかな?)


 教員室の扉にたどり着くが、ノックできずにうろうろしていると。




   ガラガラッ



綾崎道人
綾崎道人
ん? ……あぁ、東さん


 目の前で扉が開き、至近距離でジャージ姿の道人くんが現れる。

 しかし、私を見た彼の表情はやっぱりいつもより暗く、今にも目を逸らされてしまいそうだった。

東ほのみ
東ほのみ
あ、み、みち……じゃない! 綾崎先生!
綾崎道人
綾崎道人
……誰か先生に用か?
東ほのみ
東ほのみ
綾崎先生に! ……お話が
綾崎道人
綾崎道人
俺? なんだ? これから部活だけどその時でも……
東ほのみ
東ほのみ
いや! えっと、……数学、わからないところがあって! ……試験に向けて、今度教えてもらえませんか?
綾崎道人
綾崎道人
……俺に?
東ほのみ
東ほのみ
え?
だって、数学の授業は綾崎先生が
綾崎道人
綾崎道人
……宮原くんに頼めば?


 道人くんはそう言うと後ろ手で教員室の扉を閉め、体育館の方へと歩き始める。

東ほのみ
東ほのみ
(今、宮原くんって言った?
な、なんで?)
東ほのみ
東ほのみ
あ、綾崎先生!


 私は彼を追いかけて後ろからついていく。

東ほのみ
東ほのみ
なんで、宮原くんに?
綾崎道人
綾崎道人
……仲いいんだろ? 俺もそろそろ試験問題作り始めるから忙しいんだ。宮原くん、数学の小テストはいつも満点だし、教えることで勉強になるだろうから、声をかけてみたらどうだ?


 それは少し怒気のこもった声で言い伏せるような物言いだった。

東ほのみ
東ほのみ
……そう、……ですね! 急にすみませんでした! 私も着替えてすぐ部活に行きます!
東ほのみ
東ほのみ
(何怒ってんの!? 八つ当たり!?
……宮原くんとは何もないって言ったのに)


 私は一度道人くんの背中を見てから、廊下脇の階段を上って教室へと向かった。










 ☆.。.:*・゜☆.。.:*・゜☆.。.:*






 綾崎は振り返って誰もいない廊下を見つめ、俯いてため息を吐く。

綾崎道人
綾崎道人
はぁ、なに言ってんだ俺。あんな写真、梅川のイタズラだってわかってるのに……


 彼は視線を前に戻し、体育館へと向かった。






 ☆.。.:*・゜☆.。.:*・゜☆.。.:*










 準備をしていた安藤さんと合流し、一緒にドリンクボトルを運んだ。

 体育館ではすでに部活動が始まっており、そこには道人くんもいる。


 部員たちを見守るその瞳には、先程の嫌な感じは全くない。

東ほのみ
東ほのみ
(……切り替え早いんだから)
安藤由香
ほのちゃん、どうかしたの? そんなに綾崎先生みつめちゃってぇー
東ほのみ
東ほのみ
え!? ちょっと見てただけだよ!
安藤由香
あー、もしかして、ほのちゃんも綾崎先生に恋しちゃったー?
東ほのみ
東ほのみ
こ、恋って! そんな!
安藤由香
ふふふー、ほのちゃん顔が真っ赤ぁ
東ほのみ
東ほのみ
も、もうツンツンしないでー、安藤さん。……恋、とか、わかんないよ
安藤由香
え!? 本当に?
東ほのみ
東ほのみ
……だ、だって
東ほのみ
東ほのみ
(男の子なんてほぼ道人くんしか知らない……、なんて言えないよねぇー!!)
安藤由香
……あ、休憩だ!
ほのちゃん、ボトル!


 その声と共に、部員たちがこちらへ来て一人ずつにボトルを渡していく。

 タオルで汗を拭いながら宮原くんが私の前に立ち手を出した。

東ほのみ
東ほのみ
はい、宮原くんの
宮原唯月
宮原唯月
で? どうだったの?


 宮原くんは他の部員たちのように壁際によって休憩を取らず、そのまま私の隣で壁に寄りかかった。

東ほのみ
東ほのみ
……え、っと。何が?
宮原唯月
宮原唯月
何がって、わかってるでしょ?


 私はしゃがんでボトルを入れてきたカゴの整理をしながら、宮原くんに事の顛末てんまつを話し始める。

東ほのみ
東ほのみ
はぁ、宮原くんに聞けってさ
宮原唯月
宮原唯月
……は? なんで俺?
東ほのみ
東ほのみ
宮原くんが数学得意だから、教えるのも勉強になるだろうってー
宮原唯月
宮原唯月
なにそれ?
東ほのみ
東ほのみ
そんなの私が聞きたいわ!


 宮原くんを睨み付けるが、彼は私には目もくれず体育館の奥を見ていた。

 視線を追ってみると、そこには私たちを見ている道人くんがいた。

 しかし、その視線はまたすぐに切られてしまう。

宮原唯月
宮原唯月
今、綾崎先生こっち見てたよ
東ほのみ
東ほのみ
そうだね、すぐ逸らされたけど!
宮原唯月
宮原唯月
……数学教えてあげようか?
東ほのみ
東ほのみ
え、いいよ別に。
……一人で頑張るから!
宮原唯月
宮原唯月
補習の事ちゃんと知ってる?
東ほのみ
東ほのみ
え、補習って、試験で赤点とったらでしょ?
宮原唯月
宮原唯月
そ。夏休みつぶれて、部活の合宿も来れなくなるよ
東ほのみ
東ほのみ
うーん、今はその方が……
宮原唯月
宮原唯月
合宿参加ね。強制
東ほのみ
東ほのみ
はぁ!? ここでまたそれ!?


 また見上げて宮原くんを睨もうとするが、彼はいつの間にか私の隣で一緒にしゃがみ込み、あやしい笑みを浮かべていた。

 私の頭に手をのせ、軽く撫でてくる。





    ドキッ

         ドキッ



東ほのみ
東ほのみ
な、なに!? ちょっと、離してよ
宮原唯月
宮原唯月
暴れないでよ。
今見せつけてるとこだから
東ほのみ
東ほのみ
何言って……


 すると目の前までドタドタと騒がしい足音がやってくる。

綾崎道人
綾崎道人
宮原くん、ちょっときてもらえる?


 顔を上げるとそこには道人くんが焦りと怒りのこもった複雑な表情で立っていた。

宮原唯月
宮原唯月
はーい
東ほのみ
東ほのみ
え!? あ、ごめんなさい。
今のはちょっと話して――


 そう弁解しようとすると、宮原くんは私の方に振り返り、人差し指を唇に当ててシーっと小声で言った。


 二人は体育館を出ていってしまう。


 部員たちは彼らの背を目で追い静まり返ってしまうが、部長のかけ声によって練習を再開した。