第10話
溺愛先生の勘違い
道人くんの車に乗って数分、すっかり学校から遠のいてしまった。
いつもなら何も言わない道人くんが、今日に限っては助手席だと言ってきたため、私は大人しく隣に座った。
隣で運転している彼を盗み見ると、まじめな横顔、ハンドルを握る姿がかっこよくて直視していられない。
ドキッ ドキッ ドキッ
赤く染まりそうな顔を落ち着かせようと外を見ると、そこには見覚えのある景色があった。
道人くんが前を見て柔らかく微笑むと、下り坂の先には太陽の日差しでキラキラと輝く海が広がっていた。
彼の無邪気な笑顔は、窓の外に見える海にも負けないくらい輝いて見えた。
ドキッ
赤信号で車が止まると、脆いものを触れるように優しく頭を撫でられた。
精一杯、勇気を振り絞りお礼を言おうとしたが、それは申し訳なさそうにしている彼に遮られてしまった。
ド ド
キ ド キ
キ ド
ド キ
キ ド ド
ド キ キ
キ
道人くんは私を見ると、キラキラと輝く海を背景に穏やかな優しい笑みを浮かべた。
とんでもない勘違いをしているとわかり、私は間抜けな声が漏れた。
先手を打つかのように道人くんは言葉をつづけた。
ズキンッ
心臓にナイフを突き立てられ、とどめを刺されたように胸が鋭く痛む。
道人くんの顔を見てみると、少し微笑んで首を傾げていた。
そんな彼に、私はまた天邪鬼になって笑顔を返してしまう。
道人くんは腕時計をチラッと見てから何か言っていた。
けど、その言葉は全く頭に入らない。
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