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第20話

その恋、強制終了


 空き教室の中で、梅川先生は道人くんを抱きしめている。

 けど、そんな彼女を引きはがして、道人くんは私を好きだと言った。

東ほのみ
東ほのみ
(じゃあ、譲れるような気持じゃないって、やっぱり勘違いじゃなくて……そうゆう)
東ほのみ
東ほのみ
(けどけど、あたしに直接言ってくれたわけじゃないから信じすぎるのも良くない!?)
東ほのみ
東ほのみ
(梅川先生を断る口実かも! それか、妹としてか生徒として? 急にそんなっ!)
宮原唯月
宮原唯月
ふふっ、本当、東さんって表情がころころ変わってかわいいね
東ほのみ
東ほのみ
ヘっ!? こ、こんな時になに言ってるの!?
宮原唯月
宮原唯月
しーっ。良かったじゃん? 両想いで
東ほのみ
東ほのみ
なっ……。
そんなの、わからないでしょ
宮原唯月
宮原唯月
わからないって……、綾崎先生が
はっきりと言ってたの聞こえてた?
東ほのみ
東ほのみ
聞こえてた! けど、あたしが直接言われたわけじゃないから……


 私は道人くんの好きという気持ちをうまく信用できなかった。

東ほのみ
東ほのみ
(だって、あのべたべたに甘やかしてくる道人くんが本当に私のこと好きなら……、毎日告白されててもおかしくないでしょ)


 けど、道人くんは甘やかすどころか、学校では厳しくクールになった。

 なんだか、わざと距離を置いているような不自然さ。

東ほのみ
東ほのみ
(もし両想いだったら嬉しいなんて舞い上がってたけど、色々おかしい点が多いんだよね)
宮原唯月
宮原唯月
あーずーまーさんっ
東ほのみ
東ほのみ
ひゃっ!!


 窓からのぞくのをやめてボーっと考え込んでいると、宮原くんが私の耳に息を吹きかけてきた。

宮原唯月
宮原唯月
俺、こういうことは考えてても始まらないと思うんだ
東ほのみ
東ほのみ
え? そ、それって……
宮原唯月
宮原唯月
素直女子への最後の一歩、かな。
綾崎先生にちゃんと告白してきなよ
東ほのみ
東ほのみ
け、けど
宮原唯月
宮原唯月
ここまできて、しり込みする理由がどこにあるのさ? ほら、先生たちも渡り廊下に出てきた。告白のセッティングだけでもしてきなよ。


 宮原くんはそう言って私の背中を押し、渡り廊下のど真ん中に追いやった。


 左を向けば、少し目元が赤く腫れた梅川先生と道人くんが歩いて来た。

東ほのみ
東ほのみ
(梅川先生、目が赤い。
泣いて……いたの?)


 しかし、梅川先生は私と目が合うといつも通りの明るい笑みを浮かべた。

梅川沙良
梅川沙良
あらぁ、ほのみちゃんったらそんなところに膝ついちゃってぇ。
何してるのぉ?
東ほのみ
東ほのみ
あ、え、えっと! ちょっと、人混みに疲れちゃって校舎裏にいたんですけど! そろそろ、また当番が回って来るんで戻ろうかなぁ~……って


 焦って言い訳をしていると、道人くんが肩に手を回して支えながら立たせてくれた。

綾崎道人
綾崎道人
怪我はないか?


 顔が急接近して吐息が触れる距離に、私の心臓は音が伝わってしまいそうなほど脈打った。




  ド            ド
   キ   ド        キ
        キ    ド
     ド        キ
      キ   ド      ド
  ド        キ      キ
   キ



東ほのみ
東ほのみ
だ、大丈夫です!! ……あ、あの!


 そう言いかけ、顔を上げるが……。

綾崎道人
綾崎道人
じゃあ、沙良。行こうか
梅川沙良
梅川沙良
……えぇ
東ほのみ
東ほのみ
(沙良? 道人くんが学校で梅川先生の名前を呼ぶなんて……)


 道人くんは何事もなかったかのように、梅川先生の隣に立ちエスコートして去っていこうとする。

 まるでお似合いの大人な恋人同士に見える素振りに、私はくじけそうになった。

 けど、「考えるより行動」という宮原くんの言葉を思い出し、私は勇気を出してまた声をかける。

東ほのみ
東ほのみ
あや……、道人くん!


 その呼びかけに二人の足は立ち止まる。

東ほのみ
東ほのみ
あとで、……大事な話があるの!
綾崎道人
綾崎道人
……俺も、……東さんに話さなくちゃならないことがあるんだ
東ほのみ
東ほのみ
……え?
綾崎道人
綾崎道人
今ここで言わせてもらうよ。
……梅川先生と付き合うことになった。もう、今までのように車で送ることはできないから、これからは気を付けて帰るんだよ?
東ほのみ
東ほのみ
(うそ、……だって、さっき梅川先生に断っていたはずなのに。私の事好きって言ってくれてたのに、なんで?
……やっぱり、全部私の勘違い?)


 私が何も答えられずにいると、二人はその場を立ち去ってしまった。

 不自然さを感じながらも、心のどこかでうまくいくだろうという気持ちがあった。



 けど、それは告白することもできずに打ち砕かれた。


 呆然と二人の背中を眺めていたら、後ろから優しく腕が回されて抱きしめられる。

宮原唯月
宮原唯月
ごめん、俺が余計なことを言ったから
東ほのみ
東ほのみ
……宮原くんの、せいじゃないよ。大丈夫、そんなに……思ったほど悲しくないし
宮原唯月
宮原唯月
……大丈夫じゃないだろ。涙が――
東ほのみ
東ほのみ
大丈夫! 大丈夫だから……





 思ったより悲しくなんてない。

 涙なんて流れてない。

 私は……、道人くんを好きじゃない。



 そうやって、呪文のように心の中でつぶやき続けた。


 全部、わからなくなればこの胸の痛みも消えると思って……。



宮原唯月
宮原唯月
……ほのみ、もう俺を選びなよ


 宮原くんは私に向き直り、真っすぐと瞳を覗き込んできた。

宮原唯月
宮原唯月
今は俺のことを好きじゃなくたっていいから。……もう、変わろうとなんてしなくていいから――


 私は彼の口をふさぐように、強く抱きしめた。

東ほのみ
東ほのみ
(宮原くんの気持ちを利用するなんて最低だ)


 そう思いながらも、ただただ傷ついた心から湧き出る悲しみを止めてほしかった。

 宮原くんは何も言わず、瞼にキスを落としてから包み込むように抱きしめてくれた。