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第1話

8月8日
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2019/10/11 07:40
複雑に入り込んだ街を僕はただ歩く。
あてもなく、目的もなく。
さっき通った道は忘れたから、目に映るものすべてが真新しい。

蝶がひらりと僕の前を横切った。
幻想的な青に、黒く縁どられた羽は花弁のようにしなやかだ。
それを追いかけるように足を進める。
眩しすぎない光が雲と雲の間から降り注いでいた。それを受け、蝶はさらに輝く。

僕はそっと手を伸ばす。この幻をもっと近くで感じることを望んだ。
蝶は思ったよりも簡単に手のひらに収まった。
けれど、それはなんの変哲もないアゲハだっ
た。


違う。


僕はこんなものが欲しかったんじゃない。
もがく蝶からそっと手を離すと、ひらりと舞った。

ぐんぐん。上へ、上へ。

その姿はやっぱり気高くて、一瞬の過ちを後悔したのはあとのまつりだ。

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