第20話

不安
1,119
2018/03/22 12:09
《テオくんside》




医療関係者
寺島様はここでお待ちくださいね





看護師さんに落ち着いた声で言われる。





その声を聞いてもまだ俺の鼓動は鳴り止まない。





残酷な程に強く打ち続けている。





大丈夫。





じんたんなら、絶対大丈夫。





この部屋から出てきたらどうやって声をかけようか。





そうだ、いつものテンションで言ってやろう。





その方があいつも嬉しいだろうから。





だけどなんでだろう、





涙が止まってくれないのだ。





不安で、不安すぎて。





何度拭いても容赦なく溢れてくるこの涙。





もし死んでしまったら、





俺どうすればいい?





なあ、じんたん。





お願いだから、助かってくれ。





あれ以来水分は摂っていないのに
この涙は一体どこから流れてくる?





少し治まってきた震えも
応急処置の時間が長くなればなるほどに
また強い震えに変わっていく。




テオくん
頼む、じんたん…





ぎゅっと拳を握り合わせて
1時間ほどが経っただろうか。





穴が開くほどに見つめていたドアが開く。





俺ははじかれたように立った。





先生と看護師だろうか、
ストレッチャーに横たわったじんたんを連れてくる。





俺の意思とは関係なく身体がそこに向かった。




医療関係者
安心してください、右足の骨折と脳震盪がありましたが、命に別状はありませんでした





ストレッチャーを覗くと
薄らと目を開けたじんたんがいた。




☆イニ☆
…テオくん、





たった半日、いや、半日も経っていないだろう、





それなのに、





すごく久しぶりに名前を呼ばれた気がして。





さっきより激しく、俺の涙は溢れてくる。





じんたんの前では笑顔でいたいのに。





安心してしまうと、もう駄目で。





俺がしっかりしなきゃいけないのに、




☆イニ☆
…泣かないで、





俺が励まされてどうすんだよ。





涙を拭って、精一杯の笑顔を作った。





仕方ねえ、と呟く。





.




テオくん
…スカイピースは





.




テオくん
俺に任せろ!

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