第21話

笑顔
1,056
2018/03/26 06:36
《☆イニ☆side》




☆イニ☆
…… 、





なんの前触れもなく開く俺の瞼。





真っ白な天井が目の前に広がっている。





少し眼球を動かせばカーテンが目に入った。





まだあやふやな意識。





突然、シャッとカーテンが開く。




テオくん
じんたん!やっと起きた!





その後すぐに聞こえたのは聞き覚えのある声。





" じんたん "





そうだ、俺、" じん " だった。





当たり前のことを今思い出す。





動かしづらい首を持ち上げて横を向くと
見覚えのある顔がこちらを見ていた。





…誰だっけ、





確かこの顔、





ああ、そうだ、





テオくんか。





忘れかけてたんだ、俺。




テオくん
何があったか覚えてる?





…確かに、なんで俺寝転んでるんだろう、





なんの装飾もされていない部屋、

固定されていて感覚が無い右足、

そして少しだけ痛む頭、





ここは多分、病院だろう。




☆イニ☆
全然覚えてない、






テオくんが昨日あったことを教えてくれた。





そんなことがあったんだ、と
他人事ではないため全然笑えない。





記憶がなくなるほどの事故だったのだろうか。





…でも、





良かった。





なくなった記憶が事故のことだけで。





もし俺が、





テオくんを忘れてしまっていたら、





…考えるだけで恐ろしい。




テオくん
なあじんたん、





そう言ったテオくんの声は少し潤んでいた。





ん、と応答する。




テオくん
笑って?





そっか、俺、そんなに笑ってなかったのか。





指摘されて気づく。





確かに起きてから笑っていない。





テオくんが笑顔でいてくれるから
きっと俺はそれに甘えていたんだろう。





本当はテオくんが1番不安だったかもしれないのに。





少し忘れかけていた笑顔を、今日は。





____テオくんだけに。

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